モルという罪の意識 - インセプションの感想

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モルという罪の意識

5.05.0
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
5.0
演出
4.0

目次

舞台は夢の中

夢の中ではなんでもできる。ヒーローにもなれるし史上最悪の悪役にだってなれる。まさしく「夢の

ような」世界だ。

そして夢の中では誰にだって会うことができる。最愛の人だったり、最高の友達だったり。もう2度と会えない人にだって会うことができる。潜在意識によって。

コブの最愛の妻モルはインセプションが原因で自殺をしてしまう。帰る家も子供たちも失った彼は夢の中で再びモルに出会う。コブを悩ませ続ける夢の中のモルも彼女が愛しくてたまらなかった彼の潜在意識が作り出し、縛りつけられていたのかもしれない。

夢の中のモル

コブの行く先に現れては邪魔をしてくるモル。いつも夢の中に出てくるのはコブ自身が意識の中に彼女を縛りつけているからではないだろう。それは愛するモルを忘れられないのと罪悪感から。自分の実に単純なアイデアがモルを変えてしまい最悪な事態を招いてしまった。彼女への愛と自らを戒めのために罪の意識をモルという形で生み出した。そして彼女自身もコブの中でガンのように大きくなっていった。

ロバートにインセプションを行う任務での4階層目の夢の中でモルとの対峙は自分自身との対峙でもある。彼女がコブに投げかける問いはすべてコブが考えていることである。どちらが現実でどちらが夢かわからなくなり、何も信じれなくなる。いっそのこと愛しのモルと子供たちとも暮らせる夢の世界に行ってしまいたい、と。

しかし今度の彼は揺れなかった。それは何故か。

おそらく現実の子供たちのためと、自分が作り出した夢の中のモルと対峙し決着をつけるために。

この階層に降りたときにモルと2人で作った世界の一端が崩れ落ちたのは彼の覚悟の表れなのだろう。そして彼女に言い聞かせている言葉をすべて自分にも言い聞かせ、長らく自分の中に縛りつけているモルを解放した。

夢のモルが死んでしまったのはアリアドネに撃たれたからではなく、コブ自身が本物の影の存在である夢の中のモルに役目の終わりを告げたから。

彼女はもうコブの前に現れることはないだろう。

回り続けるコマ

ラストのシーンでコブが習慣でコマを回す。いつも通り回り倒れるか倒れないかというところで映画は終わってしまう。

このシーンについては様々な考察がされている。コマは止まってハッピーエンドなのか、はたまた回り続けているのか。

例えば回り続けているとしたら。

モルの死を乗り越えて影のモルを克服したのに、念願の子供たちの顔を見ることもできたのにそれが夢だったとしたら。

コブにとってはとても悲しい夢なのだろう。

だが彼はきっと夢だとは気づかないだろう。

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4.54.5
  • 93view
  • 500文字

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