夢のあやつることへの憧れと恐怖
この作品には、少し怖いけどあったら面白いなというアイデアが詰まっています。 他人の夢の中に侵入してその人の考えを盗んだり、思考を誘導すること、またその人の夢の内容を自由に設計することができるなど。 夢は階層構造をなしていて、より深い層になればなるほど時間の感覚がゆっくりになるという設定で、例えば現実世界で5分が、1層目の夢では1時間、2層目では12時間といった具合になっています。 浦島太郎の逆で、何十年もの間夢の世界で過ごしたと思っていても、現実に戻ってみると一日かそこいらだったというかんじです。 夢の世界では100%自分の好きなようにできるため、創造の父、いわば神様になったような感覚になることから、現実世界を捨てて一生夢の世界に生きていたいという欲求に駆られることのは容易に想像できます。 そして現実世界に戻ってきたときの絶望感も。 自分と妻の2人だけの理想の世界を作り上げたために妻を失うことになってしまった男が、この物語の主人公です。 物語は結末の直前から始まり、そこへ至るまでのいきさつが時間を巻き戻して展開されます。冒頭のシーンに徐々に近づいて霧が晴れていくような感覚が面白く、臨場感があります。
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