「冷たい」バイオレンス映画 - ソナチネの感想

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ソナチネ

4.834.83
映像
5.00
脚本
4.50
キャスト
4.33
音楽
4.67
演出
5.00
感想数
3
観た人
3

「冷たい」バイオレンス映画

4.54.5
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
4.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

映像の冷たさ、雰囲気の冷たさ

北野武監督の映画には、他の映画監督の作品にはみられないいくつかの特徴がある。たとえば、台詞の少なさ。冷たく、緊張感のある映像美。そして突如として現れる暴力シーン。この映画にもいくつかの暴力シーンが現れるが、圧倒的な迫力をもったものや、悲しく冷淡なものなど、さまざまである。これほど個性的な映画を撮る監督も珍しいし、まさにこの映画はバイオレンス映画の「古典」ともいえる作品であろう。

ヤクザたちの遊び

この映画では多くの時間が、沖縄でヤクザたちが、まるで子供のように遊ぶシーンに割かれている。ヤクザといえば、まさしく反社会的な勢力であり、一般人にとっては恐怖の対象である。しかし、そんな彼らもある種の子供っぽさや、人間らしさを兼ね備えているのだ。しかし、一般人の遊びとは決定的に違った遊びも中には描かれている。それは命の危険そのものを感じさせる遊びである。たとえば本物のピストルでやるロシアンルーレットなど。こうした遊びを楽しむ感覚は、一般人にはないかもしれない。しかし彼らヤクザたちは、尻込みすることなく、逃げることなく、実弾を使った遊びに興じる。一般人としての立場からみるなら、異次元の感覚がすごくする。

楽しい時間もつかの間、そして、死

沖縄の海岸で隠れて遊んでいたヤクザのもとに、スナイパーが現れる。ここからがこの映画のすごいところであり、北野映画の迫力、すぐれている点であると思う。本当に簡単に、人間があっけなく殺されていく、消されていく。余計な感情移入は一切ない。その現場に出くわしたヤクザたちも、いちいち目の前で起きた死に感情移入することなく、ただ、茫然と眺めている。こうした映画を見ると、改めて観る者は、普段我々が忘れている「死」の身近さに気づくのではないだろうか。我々はだれしも、死と隣り合わせで生きている。しかしそれを忘れているに過ぎない。映画はどんどん死が身近になっていく。そして最後、主人公の自殺はいったい何なのだろう。あのシーンもすごい。まるで、本当に軽い気持ちで、あっさりと自殺してしまう。そして自殺の後は、静寂が待っている。なんとも芸術的なシーンであり、ラストである。本当に映画としてすぐれた終わり方だと感じる。このような自殺を遂げる主人公のいままでの生きざまとは、人生とは、一体どんなものだったのだろうか。観る者になんともいえない後味をのこす、究極の名シーンであるといえよう。

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他のレビュアーの感想・評価

究極の美しさとバイオレンスのアンバランスな融合。

バイオレンスと美しい石垣島の背景。この映画を私はもう何回見た事でしょう。リリースされてから20年以上経ちますが、未だに一年に数回は見ますが、何度見ても飽きませんし、これからも飽きない、間違いなく生涯に渡って一番好きな映画と言っても過言ではありません。ギャングスタ、バイオレンスという映画のカテゴリーにはとてもおさまらない名作。あらすじは、景気の良い縄張りを持っているヤクザの組を大親分が体よく乗っ取りを企み、腹心の部下を使って、そのヤクザの親分(北野武監督本人)が殺されて組を空中分解させる為、兄弟分の沖縄の抗争に向かわせるというもの。その裏には抗争する沖縄の組の親分との兄弟分の組を解散に追い込むという密約もありました。東京から沖縄、沖縄から石垣島へ身を隠し、沖縄の地で死闘を繰り返し、最後は自ら果ててしまう・・・。(この最後の部分がまたとても印象に残る名シーン。)東京から沖縄に場所を移してから...この感想を読む

5.05.0
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