東北大震災を忘れないための本
いろんな意味で難しい
読み始めてすでにいきなり難しい。
ラジオを放送してるらしいけど、杉の木のてっぺんで?放送局とかなくて?何を言ってるのか意味不明・・・などと思いつつ読み進めました。
どうやら杉の木の上にいるDJアークが頭の中から発信しているそうで、もしかして超能力者なのかな?とか打っ飛んだ想像をこちらもしていました。
だんだん読み進めるうちに「あ、震災の話だ」ということに気づきました。
津波で飛ばされたらしく木の上にいるようで、これはもしかして死んでいるのか?とぞくっとしました。
死んでるとしたら幽霊?そしてそのラジオを受信できる人はなんなのか?メールとか届くし?これもDJの妄想なのか?とにかく読み流しはできませんでした。
杉の木の下にお父さんやお兄さんが見に来て声をかけてきたし返事をしたしという流れがあったからてっきり生きている話だと思ったのに、そうかお父さんもお兄さんも死んでいるのかと・・・
奥さんと息子からの返事がないとなげくDJ、生きてるのか死んでるのかもわからず。
この想像ラジオは距離もあるのか?それとも意識しないと受信できないのか?この世に未練を残した人なのか。
DJ自身が未練あって成仏できない自縛霊みたいなもんだったのですかね。
最後の最後に奥さんと息子さんと交信できたようで、たぶん成仏したのだと思います。
声変わりしていた息子とあるから津波で流されてから長い月日が流れ、放射能のせいで捜索もされずただずっと杉の木の上にいるDJ。
もし自分がいきなりわけもわからず一瞬の間に津波に流され自覚する間もなく死んでしまったらと考えるとDJのようになりますかね。
誰か私のことを教えてって。
生きてる人にも聞こえてる
DJアークの想像ラジオを聴いたリスナーから電話やメールがきたりするけど、メールってどうなってるのか気になってしかたないです。
電話は直接会話をしてるってことでなんとなくわかるけど、メールだとどうなるのでしょうか。
文章でやってくるのか、送る方はどうやってるのか、考えるほどに混乱します。
そして、送ってる人が生きてるのか死んでるのかドキドキするけど答えがないので落ち込みます。
この本は3.11で被災した人ではないと書けないかなというようなリアルな描写で、あれから5年経って風化しつつあるようなテレビで何度もみた映像が鮮明に頭に浮かびました。
出版されたのが2013年でしたので、風化させないために書いた本なのですかね。
聴こえてくるのは震災で亡くなった人だけなのかなと思ったけど、生きてる人でも聴こえてる人がいて想像力があれば聴こえるのかなとも思うし、死に近づいてる人がDJアークと存在が近くなったとして聴こえたのかとも思うしとても想像力がいる小説ですね。
この本はDJアークとリスナーでなりたってるけれど、震災で亡くなった人はDJにもなれるってことですね。
みなで交信できるのだからなんなら全員DJってのも可能ですね。
死んだあと
最後のほうはリスナーみんなで交信しあってて会話のようになってて、たぶんこれはみな震災で亡くなった人の集まりなんだろうけど、死んだら無になるとか苦しいつらいとか悪いことばかり想像してしまう「死」もみなでこうやって死後も交信してるのを想像したらちょっと楽しそうと思えてしまいました。
死んだあともみなで励まし合ってて不思議な感じでした。
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