人間の欲望の先にあるもの - 恋はデジャ・ブの感想

人間の欲望の最終結末

人間は理性のある動物だ。本能のままに生きる動物とは違うわけで、単純に欲望のまま行動しない。本当はこうしたい、今の仕事は嫌だ、もっとお金があったら…などと誰もが考える。それが現実になった場合、人はどう行動し、最終的に何を求めるのか。この映画は良い方に転んだ例を描いた作品だ。誰もがこっちの方に転べるとは限らないだろう。

夢の中で夢だと分かったら何をする？

過去に２回ほど、夢の中で夢だと分かったことがある。そのとき私はどうせ死なないんだからと窓から飛び降りてみた。今思えばもう少し落ち着いて、このチャンスに何をしてみようかと考えればよかった。しかし夢の中で夢と分かることはめったになく、考える余裕がない。この映画では毎日同じ日が繰り返されるわけで、考える時間もたっぷり。何をしてもＯＫだと分かると、人はやりたい事を手当たり次第やり始める。お金を手に入れ、やはり男性は女性と遊ぶことを考える。本能のままいろいろ試すわけだ。だが次第にその生活にも飽き飽きしていく。ここまではどんな人間でも辿り着きそう。この先が主人公フィルが、元々まっとうな人間なんだという本性が現れてくる。ある程度勉強もしてきて、マジメな部分もあるフィルだからこそ、繰り返しの毎日から学び成長することができたと思う。

本当に手に入れたいもの

お金を使ったり、女性と遊んだりしてみたが、何か違う。本当に手に入れたいものは目の前の女性だ。もともとフィルはテレビキャスターだから頭がいいのだと思う。だからリサーチしたこと、繰り返したことは記憶し、次の日に教訓として生かせる。そんなフィルでも本当に手に入れたいものは、なかなかうまくいかない。人間が時間とお金以外で手に入れたいものは愛だということ。すごく単純だが、何にも変えられない。人間の本能、欲望は本来すごくシンプルなものなのだ。分かっていた気がするが、この映画を観ながらあらためて感じた。

毎日リセットされるが、自分だけはパワーアップ

毎日リセットされるが、記憶も経験も自分の能力としてパワーアップしていく。私も同じ状況になったらピアノをやりたいと思った。ありえないが（笑）ピアノの先生もお金で即ＯＫなのもプチ笑い。この辺からフィルに変化が起きはじめる。学ぶ楽しさ。そしてホームレスの老人が死んでしまうところで大きく変化。人生のやりがいを見出す。人助けに駆け回るフィルは大忙しだ。死ぬ事もできなかったフィルはまるで軽く神様のよう。人間の根底には、誰かの為になりたい、誰かを喜ばせたいという思いが存在するのだ。自分のことだけで精一杯、毎日仕事に追われている。ストレスがたまり、やりたいこともできないし、本当は何がしたいかも忘れてしまった。そういう人も決して少なくない現代。この映画は１９９３年の作品だが、現代人が観て自分自身の生活をふと振り返り、考える機会を与えてくれると思う。

時間ループ物の原点

最近の時間ループ物「アバウト・タイム」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」なども面白かったが、やり直せる、というのはそもそも人間の願望らしい。しかし共通するのは一度のやり直しではうまくいかず、何度も何度もやり直しが必要ということ。やり直しがきかない現実は後悔のないように生きたいものだ。この映画は何かの事件に巻き込まれたわけでもなく、何か使命があるわけでもない。ただ人間が毎日やり直せるとなった時にどうなるのか、を描いたものだ。時間ループ物の原点と言える作品だと思う。