2作目がどう進化したか、それは観てみなければわからない - クイーンズブレイド 玉座を継ぐ者の感想

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クイーンズブレイド 玉座を継ぐ者

4.004.00
映像
3.50
ストーリー
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キャラクター
3.50
声優
4.00
音楽
3.50
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1
観た人
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2作目がどう進化したか、それは観てみなければわからない

4.04.0
映像
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
声優
4.0
音楽
3.5

目次

一作目から大進化

第一作『クイーンズブレイド 流浪の戦士』から続けてこの『玉座を継ぐ者』を観た人は、クオリティーの違いに驚いたのではないだろうか。

筆者もその一人で、一作目のセクシーアニメと銘打ちながらの白いモヤと黒いカスミの連続、「美少女」の陰も形もない作画、そして迫力のないアクションシーンにがっかりさせられた一派だ。

しかし、この『玉座を継ぐ者』は良い意味で大きく期待を裏切ってくれた。まず、ステンドグラスをイメージした『堕ちない空』のオープニングアニメに息を呑む。歌詞とストーリーの調和も素晴らしく、それぞれの美闘士たちがおのおの戦う理由を持ちながら、唯一の女王を目指す『クイーンズブレイド』のメインシナリオに沿った内容となっている。「強き者はより強く美しくあれ 持てる全て今ここに闘技を示せ」など、象徴的なメッセージがしっかり込められているのもファンには嬉しい。メインキャラであるトモエの相棒、シズカが死んだときにエンディングに『堕ちない空』が使われたのも、また心憎い演出だ。

更に楽曲に注目すれば、エンディングがまたエロティックでかなり凝っているのもポイントだ。メローナ、メナス、アイリと曲の主役が変わるたびに歌詞と作画がきっちり変わり、視聴者を喜ばせてくれる。

ストーリー面においても、二作目の大進歩が見えた。主人公=クイーンズブレイドを勝ち進む必要性があるため、どうしても主人公であるレイナは強くなる必要があるのだが、前作までのレイナではとてもじゃないがそこまで勝ち進める見込みはなかった。しかしその必然性に後押しされる形で、それまで目的もなく戦っていた主人公のレイナが勝ち上がっていくにつれ、肉体的にも精神的にも強くなっていく。ファンの間で起こっていた、前作までのレイナヘイトも幾分緩和されたようにも見えた(といっても、原作ゲームブックでは強くないレイナが何故そこまで優遇されるのか?と思う人は多いようだが)。

作画についても前作よりは大きく向上。『クイーンズブレイド』本戦が進むにつれて加熱するアクションシーンも、違和感ないレベルまで描ききれている。

こうした“レベルアップ”に喜んだファンは多いだろう。むしろ、前作の「がっかりクオリティー」から一新され、良コンテンツにふさわしいアニメ作品になったと安堵した人も多かったかもしれない。

ドラマ性の向上こそが、進化のタネ

さて、しかしながら前項で述べたような内容というのは、一般に溢れる良アニメの前提でしかない。実際のところ、1クールで1作品はこの程度のクオリティーのアニメはある。

だが、アニメ『クイーンズブレイド』が存在感を示したのは、元から持つ魅力的なキャラクターデザイン・キャラ設定という土台の上に、偶像劇的なドラマを築けたことにある。

そもそも、ゲームブック『クイーンズブレイド』のキャラクターたちには、それぞれ設定がある。何故戦うのか、どういった背景があって女王を目指すに至ったのか……主人公が設定されていない遊戯だからこそ、綿密な設定があり、それぞれのキャラクターにそれぞれファンがいるのだ。

前作『流浪の戦士』では、レイナが旅先で出会ったキャラクターたちの自己紹介的な側面が目立ち、強さや個性、人間関係がいまいち把握しきれなかった部分がある。そこに物足りなさを感じた人も多いことだろう。

だが、今回の『玉座を継ぐ者』では、そうした土台を踏まえてのキャラの動きがあり、ファンたちの心を引き付けていく。

例えばアイリ。前作では悪役的立ち位置だった彼女が、ラナの保護者としての役割を持つことで、今まで観たことのない一面を見せる。歴戦の傭兵エキドナに関しても、強く孤高の存在で、優勝候補かと思われた彼女が、弟子であるイルマのために敗戦するなど、意外性と絡めてのドラマを見せてくれた。カトレアやクローデッドといった優勝候補たちが脱落していくのも、それぞれの情愛に基づいた結果だと思えば納得がいく。

ご都合主義的に勝ち進んでいく主人公のレイナではあるが、「今まで出会った人たちの気持ちを受け止めて強くなり、勝ち進む」という意志を見せたことにより説得力と存在感が増していく計算だ。

こうして顧みれば、『クイーンズブレイド』という“女だらけのバトルロワイヤルもの”の特異性が、ストーリーの重要な部分に影響を及ぼしていることに気づかされる。クローデッドやエキドナ、カトレアについては前述のとおり、トモエはシズカを討つことで決意を固め、より強くなる。アイリは懐いてきたラナを生かし、そのラナはレイナの剣を強化するのを手伝う。“クイーンズブレイド”の裏で動いてきた、女たちの情と愛の連鎖こそが、キャラクターたちの個性を強め、物語をドラマティックに飾っていくのだ。男たちの武闘大会では、決してこんな物語にはならなかったであろう。女たちの情愛の戦いの末、その頂点に女王(愛と戦いの象徴)の座があるというのも興味深い。

こうした土台の上に築き上げられた物語は、女王アルドラについていた堕天使・デルモアを倒すことによって大団円の完結をみる。石になった面々も元に戻り、アルドラはデルモアから解放され、カタルシス的にも最高の結末であったといえよう。

(筆者などは後半、レイナよりもラナを応援してしまい、両親を石から助け出す際にアイリの精神が蘇ったシーンなどは、感動して涙腺が緩んでしまったほどだ。『クイーンズブレイド』のもう一人はラナだと思うのだが、これは筆者の私見が過ぎるだろうか……)。

回収されていない伏線は次作に続く

とはいえ、『クイーンズブレイド』にはまだまだ回収しきれていない伏線がたくさんある。特に沼地の魔女などは、まだまだ実態が明らかにされていない。

この辺りの伏線は次回作『クイーンズブレイドリベリオン』に続くのだが、そちらを観ていない読者のために本稿で言及は避ける。

確かなのは、『クイーンズブレイド』シリーズは『リベリオン』『グリモワール』と続いていき、まだまだ収束の目を見ないということだ。

『玉座を継ぐ者』で魅せてくれた偶像劇的セクシーアクションアニメが、今後ますます隆盛を見せてくれることを期待したい。

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