次々と起こる不幸話に涙がとまらない傑作です
激動の時代の悲しい夫婦の話に号泣する
1940年代から1960年代にかけて時代に翻弄された中国での夫婦の叙事詩です。ばくちで全財産を無くした夫は、影絵芝居で生計を建てます。遠征先で人民解放軍と国民軍の戦争に巻き込まれ、無事帰りついた時には、妻は湯売りで極貧の暮らしをしていました。そのうち長男が事故で死に、聾唖の娘がやっと嫁にもらってもらったたと思ったら初産で死ぬという不幸を乗り越え、娘が残した孫と娘の夫ともになおも生き抜くというものです。
まあ、次から次へと不幸がやってきて、哀れで、そんなアホなと思わなくもないですが、夫婦はそれでも生きていきます。普通は生きるのが嫌になるはずなのに、活きる、それがテーマなんですよね。もし、私達ならどうするか、というより、こんな不幸は起こりえないというように、現代の私達は考えるはずです。
傑作か駄作か賛否両論かも
この作品を、傑作とするか、駄作とするか、ひょっとしたら賛否両論かもしれませんが、私は「大傑作」と言いたい派です。その理由は一言でいうと、めちゃくちゃ泣かされたからです。泣いて泣きまくった。ちょっとかわいそうすぎるって思わず口に出した。子供をストーリー上、どんどんなくすって、アンフェアじゃない?と思わなくもないですが、そういう時代だったんですよね。
非常に長い時間を短くまとめているので、いかにも作ったっぽい話に見える人には見えるでしょうけど、逆にこれを「引き締まった形」にまとめてくれたということもできると思います。
俳優の演技が素直で素晴らしい
相変わらずですが、チャン・イーモウ監督ですから、映像も音楽も素晴らしかったですね。また、出ている俳優たちが子役を含めて皆、文句のつけようのないほど、素直に演じていて素晴らしく輝いています。悲しい話をおおげさに描写せず、ぎりぎりのところで抑えているところが見る者の胸を打ちますよ。
たった一人、今をときめくグォ・ヨウがにやけた顔で出ていて、時折、もっと悲しめよ、と思うぐらい淡々と演技をしているし、若い頃と、その後が、骨抜きになったような変わりようを演じていますが、まあ、それは狙ってやっていることなんでしょうね。(もっと、若い頃の無鉄砲ぶりの名残があってもよかったのではと思います)
最初から最後まで、悲惨のリーダビリティーで目が離せなませんし、ある意味、無駄なシーンが一つもありません。大部分はやはり俳優の力とセリフの力が大きいのだとも思います。随所に暖かいユーモアも盛り込まれていて、この監督の高いセンスが含有された物語で感動作です。
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