ダークな主人公ピノキオ - ピノキオの感想

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ピノキオ

3.803.80
文章力
3.50
ストーリー
3.50
キャラクター
5.00
設定
4.00
演出
3.50
感想数
1
読んだ人
1

ダークな主人公ピノキオ

3.83.8
文章力
3.5
ストーリー
3.5
キャラクター
5.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

ジェゼットじいさんは善なのか?

誰もが小さな頃に、聞かされたことのある「ピノキ」子供が読む絵本などに、抜擢されていますが、夢や希望だけではなく人の心の中にある悪と善を巧みに取り上げ、作り上げている作品です。「ピノキオ」の中で、ジェゼットじいさんは、絶対的な善の姿として描かれていますが、私はそうは感じませんでした。自分の信じる事や良い行いを、人に対して押し付けることは、相手にとって本当に良い行いとは思えなかったのです。

 

童話の中にある暗い部分

童話は、子供向けに作られているお話しではありますが、ピノキオの中には、人間の見たくない部分だ多く含まれています。ですから、ピノキオという、木のあやつり人形が動くという夢物語なのですが、読み終わった後読感は、あまりいいものではありません。その理由に、ピノキオがあまりにも邪険な仕打ちを受けてしまう所にあると思います。いくら悪い事をしたからといっても、木にピノキオを吊るしてしまう場面とか、ロバになってしまうのは悲劇としか言いようがありません。また、あやつり人形という題材をテーマにした事が、「ピノキオ」の影のテーマに思えます。人々が常日頃から、自分の思うように操っている人形が、どういう気持ちを持っているのかを考えるチャンスです。例えば、上司が部下に対しての気持ち、上から人を見下し自分の思うように、気がつかないうちに、操り人形のように、人を使っている事に気づいて欲しいと思います。

 

そそのかした悪い友達はどうなった?

ピノキオは、悪い友達にそそのかされて、怠け者の国にいきますが、その悪い友達はいったいどうなったのか気になるところです。ピノキオを何のために、怠け者の国に誘ったのかを描いていないと、物語に納得ができません。悪い友達も、怠け者の国にいったのだから、ロバになってしまったというところまで、知りたいですね。童話というのは、発想力勝負みたいな気質があり、奇想天外な事が起きれば面白いように感じますが、それでは心に残らない物語となってしまいます。主人公や登場人物の心が、感じられないのは、きっとそのような部分がピノキオにはあるからです。

 

オカルトチックでもあるピノキオ

「ピノキオ」は、想像力をかき立てる素晴らしい童話だと思いますが、ある意味オカルトチックな話しだとも感じます。もしも、自分の可愛がっている人形やぬいぐるみが、話し出したら、恐怖でしかありません。しかも、ピノキオは人間が作ったあやつり人形なのですから、オカルト的な存在な事に間違いないでしょう。もしも、実写版などで、「ピノキオ」をホラーで作ったのなら、かなり怖いお話しになりますね。私は、そんな怖いお話が、ちょっと作ってみたくなりました。

 

ピノキオは本当に悪いの?

ピノキオは、悪い人間にそそのかされ、ジェペットじいさんを裏切ります。それらは、とても悪い事として描かれていますが、ピノキオ本人が悪いとは思えません。悪い子ではなく、世間を知らないおバカさんなのです。どちらが得なのか、楽しいのかと、単純に考えて実行する子供なのです。確かに、ピノキオは、木から生まれて間もない訳ですから、そういった子供の要素を含め、子供に共感できるキャラクターとして作りあげたと言えます。そんな角度から、ピノキオ自身をみてみると、人間は生まれた時には、悪い部分がたくさん持って生まれ、育つ家庭において愛情の中で、豊かで優しい、人を思いやれる感情が育つということになります。

 

サメの中は何を意味するのか?

お話の後半で、ジェペットじいさんは、サメのお腹の中でピノキオと会う事ができるのですが、サメのお腹の中で暮らしているという設定の想像力には驚かされます。サメに襲われて、すぐに助け出すということは考えられますが、お腹の中で住み続けるということは、容易には考えられません。ここで作者はなぜ、サメのお腹の中で、おじいさんを暮らさせていたのかを考えると、親の愛情の深さを意味しているとも考えられます。例えサメに食われても、愛情は無くならないと伝えたいのでしょう。

 

ピノキオの変化に注目

童話と言うと、夢や希望、美しいお姫様など、好印象の物語が大半だと思いますが、「ピノキオ」は、読んでいても楽しめる物語ではないと思います。一般に言う、子供が読むおとぎ話とは、少し違った角度から描いているのです。その違いとは、ピノキオの変化です。当初、自分のことしか考えなかったピノキオですが、辛い体験や経験を経て、徐々に気持ちが変化していきます。自分の存在という観点から見られなかったピノキオが、人の気持ちを感じる事ができるようになり、ジョゼットじいさんの思いを感じる事ができるようになります。人として、一番大事なのは、人の気持ちを感じとれる事です。行動や考えは、その次に、起こせばいい事であって、まずは人の気持ちを知ろうとする気持ちだと、「ピノキオ」読んで思いました。

 

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