カーウァイ監督の良さが詰まった大傑作 - 恋する惑星の感想

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カーウァイ監督の良さが詰まった大傑作

4.04.0
映像
4.5
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
4.5
演出
4.5

目次

映像、テンポ、音楽が観るものを引き込んでいく。

麻薬密輸組織のリーダーの女が仲間に裏切られ、復讐し逃走する。一方で、女に振られ、わずかな希望を抱いたまま自分の誕生日の夜を街のあちこちで過ごす刑事。この男女が出会い、ホテルで過ごし(セックスしない)朝を迎え、男が去る。そして入れ替わるように、飲食屋の店子と地域の警察官が登場し、振られたばかりの警察官とこの警察官に思いをよせる店子。店子は警察官の別れた女から警察官の部屋の合い鍵と手紙を託され、その鍵を使って黙って警察官の部屋に入り、模様替えや掃除など楽しむ。やがて見つかり、警察官は彼女をデートに誘うが、女はカリフォルニアに消えていた。

という二つのストーリーで構成されます。正直、もしこの映画の脚本だけを買って読むなら、特段、何の感動も起こらないというのが正直なところです。

では、どうして、この映画に惹きつけられるのか。それは、やはり映像、テンポ、そして音楽なのかと思います。

個性的な俳優の演技や香港の街を暗めの映像で映し出す

映像においては、まずは被写体である俳優陣。当時の香港スター俳優の競演で話題になりましたが、特にトニー・レオンの影のある演技と、ワンフェイのひょうひょうとした演技が個性的てコントラストとしてもとてもよかったです。また香港の街、生活、特に上空のすぐを舞い降りる飛行機の映像がとてもリアルでした。

明るい映像というよりはむしろ暗いぐらいの映像で、逆にこれが作品の切なさ、陰鬱さなどムードを醸し出しています。また、主な被写体以外の背景が波のように流れていくという監督独特の撮影技法もアクセントとして格好いい。

また、テンポこのカーウァイ監督特有のドキュメンタリー感というか、本当の日常生活にテンポを合わしたかのような「間延び感」をベースに、時に静かに時にコミカルにシーンを映し出し、観るものをストーリーに引き込んでいきます。

何より音楽が素晴らしい

作品の肝として特徴的なのは登場人物のナレーション、特に独白部分です。これは観衆を引き込むベタな手法といえばそれまでなんですが、テーマが(この監督はいつも)「愛」なので、はまります。

また、何より、音楽が素晴らしいです。これは、音楽がない部分、街の喧騒だけの部分、そして音楽を流している部分、すべてを含めての意味です。もし、この監督の優位性を一言でいうなら音楽と言っても過言ではないのではないでしょうか。映像と音楽の合わせ方、曲の選び方が抜群です。今でもカリフォルニアドリーミングや夢中人を聞くと、この映画を思い出します。

とにかくカーウァイ監督の良さが詰まった傑作です。

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