原作漫画のエピローグ
OVA作品の位置付け
原作漫画は、全20巻で構成された長編物語です。その内容をOVA作品3巻に纏められるわけはありません。私自身、原作漫画は読んでいませんが、原作漫画の内容の一部をピックアップして脚本を作られているのだと考えられます。
OVA作品を観て物語の続きが気になれば、原作漫画を読んで下さい、という位置付けのものなのだと思います。登場する人物や天使、世界観は深いもので、凝りに凝っているものです。非常に細かく設定されていますので、それを理解するだけでも、頭が痛くなりそうな印象を持ってしまいます。
ただ、描き方次第では、テレビアニメ放送できる内容の物語だと思います。
ひょっとしたら、テレビアニメ化されることはあるのかもしれません。
エンディングの在り方は、物語はまだまだ続くような終わり方をしていますので、先の展開が気になってしまいます。兄妹の愛の行方はこれからどうなるのだろう、と観る側に訴えてくるのは、制作スタッフの脚本づくりの上手さの表れではないでしょうか。
天使の存在や、主人公が何物なのか、全ては明らかにされていません。投げっ放しで終わっており、広げた風呂敷は綺麗に折り畳まれていないのです。天界や人間界、地獄はどんな世界なのだろう、と気になってしまうのはキャラクターが魅力的なことの表れなのだと思います。
そして、一般的な天使のイメージを覆す場面が印象的で、魅力的に描かれた世界観だと感心させられます。きっと、制作スタッフの方々は原作漫画が好きで、観る側を原作漫画に誘導しようという意図を感じられるもののように思います。
禁忌への挑戦
無道 刹那(むどう せつな)と無道 紗羅(むどう さら)は兄妹の関係であり、お互いに惹かれ合った存在です。
これは近親相姦の構図であり、禁忌を描いているのは明らかです。ただし、実際に兄妹の関係性を持っている方であれば、この構図に嫌悪感を抱く方もいると思われます。現実的には、お互いを拒否して嫌ってしまう傾向が強いようです。
なかなか、実妹を好きになってしまうことを現実的に考えることができないのではないでしょうか。
現実的に考えると、親からの愛情や扱い方、平等にならない現実から不平・不満が蓄積されることが多いように思います。創作物ならではの構図だと考えられますし、「天使禁猟区」というOVA作品の面白みを感じさせる部分だと思います。そして、OVA本編では、刹那と沙羅の展開が物語本筋に据えられており、その事実が、制作スタッフがメインで訴えたいメッセージ性だと受け取ることができます。
観る側が男性であれば実妹が居る方、女性であれば実兄が居る方にはどのように映るものなのでしょうか。
やはり強いのは、嫌悪感なのでしょうか。しかし、全ての人が嫌悪感を抱くとも限らないように思います。考えてみると、圧倒的な大多数の方が、この作品のテーマや展開に嫌悪感を抱くのであれば、「天使禁猟区」という作品そのものの存在が有り得ません。
しかし、原作漫画の存在があり、さらにOVA作品としてアニメ化されている現実があります。
すなわち、「天使禁猟区」というOVA作品を受け入れる層は、一般的な風潮とは裏腹に、潜在的に多いことの表れなのだといえないでしょうか。現実問題として、兄が妹を好きになってしまう、妹が兄を好きになってしまう事実があることの表れともいえます。
もしかしたら、原作者の体験や願望を表面化させたものなのかもしれません。
また、意図的に残虐な描写をされている場面がありました。真っ二つに切り裂かれる天使の場面や、血しぶきする場面が多いのも印象的です。意図的に残虐に描いていたのだと思いますが、それ自体もおぞましい映像でした。
禁忌は「おぞましさ」に置き換えることができるのではないでしょうか。敢えて、「おぞましさ」を演出することで、禁忌を描いていたのかもしれません。
天使のキャラクターデザイン
とてもユニークなキャラクターデザインが成されたコンテンツだと思います。三枚羽根の天使の印象は、不気味な印象を抱きます。羽根とは本来、空を飛ぶための部位です。そして、それは左右対称にあるものだと思います。
左右対称であることから、自ずと偶数となります。動物でいえば、二つ以上の羽根をもった存在は稀有なのではないでしょうか。少なくとも私自身、二つ以上の羽根をもった動物を知りません。また、動物以外では、虫の存在が挙げられます。虫においては、二つ以上の羽をもった存在は多いです。しかし、左右対称で対となり、四枚や六枚といった偶数で構成されています。
奇数である三枚羽根の天使という存在は不気味な存在であり、不合理なものだと考えることができます。生物とはそれぞれの環境に合わせ、合理的な形状に進化してきたものなのではないでしょうか。
生物学的に考えると、三枚羽根の天使は不合理な存在であり、禁忌を思い浮かべるものだと受け取ってしまいます。一般的に有り得ないものを描いていることは、暗に禁忌の存在を指したものだと考えることができるのです。
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