前髪で顔半分を隠した美少女
物語冒頭では怖いヒロイン
ヒロインの堕花 雨(おちばな あめ)の前髪で隠された顔は、ドラマ作品や映画作品「リング」に登場する「貞子」を思い浮かべるものがあります。
正直、それだけで恐怖を感じさせるものがありますが、前髪に隠された美少女の素顔は、恐怖を感じさせる最初の印象を見事に覆します。二面性のギャップが大きく、外見面においての魅力となっているように思います。また、いかにも電波系な雨ですが、前世が騎士だった設定を守っている姿は、忠義を尽くす武士のように映ります。女性キャラでありながら、忠実な武士である姿にもギャップを感じられ、彼女自身の魅力になっているように思えます。
その健気な忠義に、主人公の柔沢 ジュウ(じゅうざわ ジュウ)が折れ、態度を軟化させるのも理解できる気がします。きっと、雨は、ジュウのことが以前からずっと好きだったのだと思います。しかし、愛情表現の仕方が、アニメ本編を観ていて面白いと感じさせます。それが「電波的な彼女」というアニメ作品の魅力になっているのではないでしょうか。
また、主人公のジュウより、雨の方が、知識量が圧倒的に高いのは「電波的」という言葉で示唆されています。しかし、頭の回転においても、ジュウより雨の方が優れています。そのことにより、ジュウの立場がないのも笑えてしまいます。主人公の立場を奪ってしまうほどの強烈な存在なのだと考えられます。
作品タイトルの「電波的な彼女」の大部分は、雨を指したものといえます。よって、アニメ本編の中で、大きな存在感であることも仕方ないことなのでしょう。
事件発生と解決
「電波的な彼女」という作品タイトルにおいて、雨だけを指しているのではないと考えられます。主人公、ジュウの身の回りで発生する事件も電波的であり、その事件に関わっている存在も「電波的な彼女」なのだと考えられます。
男女交際における「彼女」という意味ではなく、女性キャラクターを指す人称代名詞の「彼女」として捉える必要があるのではないでしょうか。それを表す明確なこととして、第一話と第二話で発生する事件は、いずれも主犯格に女性の存在があります。電波的な女性人物が、電波的な事件を引き起こしており、シュウと雨が事件の解決を図ります。アニメ本編に関わる電波的な女性を指した言葉として、作品タイトルを「電波的な彼女」としているのだと思います。
「電波的な彼女」を観終えて、電波的なのは雨だけではないと感じました。全般的に電波系に分類できる女性人物が多いと感じました。それで、作品タイトルを考えてみたときに、このような結論に到達しました。ひょっとしたら、制作スタッフの意図する部分とは違うのかもしれませんが、私はそのように受け止めています。
幸福ゲームの恐ろしさ
幸福の量が一定量である、という宗教染みた考え方を持ち出しています。いかにも電波的であり、良い着眼点だと思いました。
特に、参加する全てが、幸せな人間を幸せから引きずり降ろそうとします。もし実現されれば、周囲の人間は足の引っ張り合いになり、とても幸せな社会が実現されるとは思えません。
アニメ本編においては、その足の引っ張り合いが物語展開としての面白みとして描かれていました。しかし、現実社会で同じことが行われることの怖さを感じさせるものがありました。
そして、日本人には定着しやすい考え方だといえます。
現実社会では、経済の在り方として価格競争が起こっています。しかし、それとは別路線の戦略が展開され、社会に馴染んでいることがあります。それは、企業が会員を囲い込み、ポイントを付与するシステムです。日本人はコツコツと貯めていくことを好む民族だと云われています。他国において、ポイントサービスと呼ばれるものは、ここまで一般的なものとして浸透していないそうです。
日本人という民族特有の傾向であり、嗜好性だと考えられるのです。
そういったネタを扱っていることが、物語の背景をリアルな描写にしているように思います。
全2話で終わってしまう寂しさ
「電波的な彼女」というアニメ作品が、全2話で終わってしまうことに残念だと思います。
面白いアニメ作品だと思いますので、続編が制作されても、面白いアニメ作品になるのではないでしょうか。全体的には、「起承転結」の「起」や「承」の部分で終わってしまっているように感じられるのです。主人公のジュウと、ヒロインの雨の付き合いは始まったばかりで、付き合う期間が長くなることでの衝突や、物語上での意外な展開をさせられたように感じられます。
そして、電波的な雨という存在が、少しずつ「電波的」から「一般的」な彼女に変わっていく様子が描かれていたら、面白かったのではないでしょうか。
終わり方が中途半端なだけに、その後の付き合いにおいては観る側に想像させるようになっています。想像させるのも悪くないですが、雨が変化していくのか、電波的ぶりは崩されることがないのか、方向性は示してほしかったように思います。
まだまだ描き切れていないこと、描くべきことが沢山残っているアニメ作品なのだと思います。着眼点が良かったコンテンツだけに、キャラクターデザインが良かった作品なだけに、ここで終わってしまう残念さも強いように感じます。
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