自業自得を描いた悲しい物語 - ウインダリアの感想

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ウインダリア

4.004.00
映像
4.00
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
観た人
1

自業自得を描いた悲しい物語

4.04.0
映像
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

同世界の中に二人の主人公

この「ウインダリア」というアニメ作品を観て、印象的に感じたのは、同じ世界の中に二人の主人公が存在して、交わり合うことなく締め括られることです。

一人目の主人公は疑いようもなく、青年イズーの存在でしょう。彼の存在を中心に、基本的には物語進行しているように思います。そして、二人目の主人公は、イサ国の王女であるアーナスの存在です。制作スタッフは、アーナスを主人公に据える意図はなかったのかもしれませんが、存在そのものが大きく、結果的に主人公のように映っているのかもしれません。

もし、二人の主人公を意図的に据えるのであれば、二人の主人公が交わる場面が描かれていたのだと思います。しかし、全く交わることがなく、同じ世界に存在しながら別々の道のりを辿っています。その事実が、意図的に据えられたものではないことを表しているところです。

また、敵対国の首脳の子供たち同士の恋愛は、本来の主人公であるイズーには関連性の薄いものです。実は、その場面が皆無でも、物語そのものは成立してしまいます。

しかし、敢えて、その場面を描いたという事実は、アーナスという存在自体も主人公として扱われていたことに他ならないのではないでしょうか。ただ、シチュエーションは「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせるもので、比較的に近い結末だったように思います。ただし、アーナス自体が、恋人を射殺して、自分自身の命を絶つ心中という結末は強烈なインパクトを残すものでした。

 

全てを失ったイズー

青年イズーの好奇心や野心は、己の器を遥かに超えるものだったようです。本来、彼自身が大切にしなければならなかったのは、奥さんであるマーリンだったはずです。しかし、それを理解していなかった青年イズーは、己の願望のままに行動してしまいます。

戦争によって、一時的に富と名声は手に入れられたのかもしれません。青年イズーの戦争における功績は大きく、彼自身の能力や頭の良さは素晴らしいものだったことは否定できないものです。しかし、手に入れた富や名声により、調子に乗り過ぎたイズーは疎まれる存在となり追われることになります。能力面では長けていても、人格面では欠けていたことの表れではないでしょうか。

3カ月も戦勝祝いをしていれば目立つでしょうし、周りの空気も読めなかったのでしょう。この状況であれば、疎まれて当然といえます。明確な目的・目標に対しては、優れた行動力を発揮できるタイプなのでしょう。しかし、それだけであり、この「ウインダリア」というアニメ作品を通して、青年イズーに同情する人はいないでしょう。

同情するのは、奥さんであるマーリンであることは間違いないように思います。イズーのことを信じて、死んでしまっても魂だけは家で待ち続けたマーリンの気持ちが痛いです。マーリンが良い奥さんであればあるほど、青年イズーの行動は悪いものに映ります。そして、青年イズーの失ったものは大きいものだったように思えるのではないでしょうか。

青年イズーにいえることは、「自業自得」です。絵に描いたような綺麗な「自業自得」ぶりだと考えられます。そして、青年イズーは最後の最後まで、自分の過ちに気付くこともなかったのではないでしょうか。

最後に、青年イズーは幽霊船の船長になることを決めます。それで、過去の過ちを取り返すことにはなりません。亡くなったマーリンに会うこともできません。なにより、既存の幽霊船の船長に、任を譲り受けることはできないでしょう。

青年イズーは幽霊船の船長になると決めている事実が、過ちから何も反省しないことの表れのように感じられます。彼自身のとるべき行動は、幽霊船の船長になることではないのではないでしょうか。

石になったドルイドが語ったことが、それを物語っているように思います。

 

戦争を通して描かれていたもの

冒頭で記述した二人の主人公然り、この物語の登場人物は誰ひとりとして幸せになっていません。表現はおかしいですが、気持ち良いと思えるほど登場人物の全てが不幸な結末を迎えています。

「皮肉」という言葉しか見当たりません。

戦争を通して描かれていたもの、それは「皮肉」以外の何ものでもないのだと思います。

目先の「欲」に対して、待っていたものは望んでもいない結果であり、不幸が訪れています。そして、戦争を通して描かれていたもの、それも不幸な結末です。不幸になりたくて、戦争を始めたのではないと思うのです。当初は描いていた幸せな未来像があって、「欲」が抑えられなくなってしまうのでしょう。

「欲」に対して、不幸な結末が待っており、それが「皮肉」に描写されています。

こういった物語の結末では、後味は決して良いものになりません。悪い印象しか残りませんが、悪い印象が残ることで確実にいえることがあります。

それは記憶に残ることではないでしょうか。良い印象を残した作品にいえることは清々しさを感じて、そのまま記憶から消えてしまうのだと思います。しかし、悪い印象が残ると、記憶に留まる時間は、明らかに長いように感じられます。

「イジメ」問題においても、虐めた方は記憶から消えますが、虐められた方はいつまでも記憶に残ると云われています。

それと同じことがいえるのではないでしょうか。

人々の記憶に残す為、意図的に、徹底してバッドエンドにしたのだと思います。

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