戦争や環境問題への風刺なのか!? - 青の6号の感想

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青の6号

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
5.00
音楽
5.00
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戦争や環境問題への風刺なのか!?

4.64.6
映像
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

原作マンガとは別モノ

元々、原作マンガが存在したらしいです。しかし、物語や展開、登場人物に至るまで、全くの別モノのようです。原作マンガは国家間の戦争という意味合いが強く、作品自体のメッセージ性においても、違ったものになっているのかもしれません。

しかし、共通した設定や登場人物はあり、OVA制作に向けて新しくストーリー作り直した、ということなのだと思います。OVAパッケージには、登場人物である紀之 真弓を全面に押し出したものになっていますが、彼女自身もOVAオリジナルキャラクターのようです。

物語や作品の根幹となる主人公が、原作マンガとは違いますので、本当に別モノとして考えた方が良いのかもしれません。私自身、原作マンガを読んでからOVAを視聴したのではないので、特に問題に感じませんでした。

しかし、原作マンガ好きの方からすれば、期待を裏切る内容だったのではないでしょうか。一般的にはOVAオリジナルストーリーであっても、原作の話に沿い、原作では語られなかったストーリーや、原作のエンディングの後の話を展開されることが多いです。

思い切った決断で、制作されたOVA作品であることは間違いないと思います。

 

捉えどころのない主人公

他の登場人物と比べ、主人公の速水 鉄は目的意識が弱い印象をもちます。そもそも軍人から退いていた身であり、昔の戦友から勧誘を受けて「青の6号」に搭乗しています。よって、目的意識という面では、他の搭乗クルーより弱いのも当然なのだと思います。

ただ、捉えどころのなく、何を考えているのか分からない主人公だからこそ、物語がどのような方向に進んでいくのか、見通せないようになっています。それが結果的には良い方向に作用していたのではないでしょうか。ただ、主人公の速水は、無益な殺生をしない、という点において徹底されています。そして、無益な殺生をしないことが物語の大きな要だったように感じます。

敵対組織の乗る潜水艇から降りてきたミュータントを速水が助ける場面があります。ここでは、ヒロインの真弓が銃を向け、ミュータントを殺してしまおうとするも、速水が制止してミュータントを逃がします。この場面では、真弓がミュータントを殺してしまうところ、速水が制止して逃がすことで、速水のミュータントを助けたことが強調されています。

この場面では、すでに弱っていたミュータントに対し、真弓は銃を向けなくても良かったでしょう。また、ミュータントを助けるということであれば、そのまま見逃すという展開でも良かったでしょう。しかし、アニメ本編ではこのように描いていることから、速水がミュータントを助けるという行為を強調していることが伺えます。昔話で例えると、浦島太郎が亀を助ける場面と重なります。

OVA作品「青の6号」の物語は、ここからストーリーの本筋が動き出した場面であったように感じられます。主人公、速水の戦争をしていても、無益な殺生をしないことを強調している場面であり、物語の本筋が動き出した大切な部分だと捉えることができます。

 

速水が助けたミュータント

OVA作品「青の6号」の中で、メインヒロインのような存在であり、浦島太郎で例えるなら、亀という大きな存在です。しかし、名前は設定されていないようで、可哀そうに思えるキャラクターだと思います。人間である真弓より、アニメ本編の中でヒロインとしての役割を全うしているように感じられます。

速水に助けられた恩を義理に感じているのでしょう。しかし、それとは別に、速水に対しての愛情のような感情を強く感じられます。

速水に対しての感情が、助けられた義理だけなのであれば、逆にミュータントが速水を助ける場面がありますので、それで義理は立派に果たしていると思うのです。しかし、速水の命を救った後にも、健気に、速水のことを守ろうとしています。

そして、それだけではなく、他のミュータント仲間に迫害されても、速水に向けた感情が折れることがありません。ミュータント仲間に異端視され、暴行されても、決して折れずに自分の意思を貫き通す場面では感動させられます。主人公の速水においても、同乗クルーから異端視されていますので、そこの部分は同じなのかもしれません。

 

物語の結末について

これまで数ヵ所、浦島太郎に例えていますので、浦島太郎と比較して「青の6号」の結末を述べていきます。

乙姫に該当するのは、ゾーンダイクだと考えられます。浦島太郎の話では、玉手箱を開けることで、浦島太郎自身がよぼよぼの爺さんになってしまいます。そういう意図があったのか、不明な部分ですが、ゾーンダイク自身がよぼよぼの爺さんだったのは皮肉に感じてしまいます。

また、浦島太郎は、玉手箱を開けて爺さんになってしまうことで、物語が締め括られます。竜宮城で過ごした時間は地上世界では数十年という時間であり、玉手箱を開けることで、浦島太郎の身体にも同じ時間が経過してしまう、という解釈があります。

OVA作品「青の6号」の結末において、時間の経過という結末ではありません。しかし、別世界という部分については共通するものがあるように感じます。浦島太郎が帰ってきたのが、数十年も経過した世界であるなら、それは別世界であると考えることができます。すでに亡くなってしまった知り合いも多いでしょうし、政権交代が起こっているかもしれません。もしかしたら、戦国の世の中になっていたのかもしれません。この結末において、別世界であると捉えることができるのではないでしょうか。

OVA作品「青の6号」においては、別世界というより、新しい世界という表現の方が正しいように思います。これから、人類やミュータントたちが協調することで、新しい世界を築いていくことを示唆した終わり方でした。

「別世界」「新しい世界」と方向性こそ違うものの、これまでと違う世界を示唆していることは同じなのではないでしょうか。潜水艦のバトル展開が多いOVA作品「青の6号」と昔話「浦島太郎」を比べること自体が乱暴なのかもしれません。しかし、改めて考えてみると、「浦島太郎」のような要素が多いOVA作品だと感じました。

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