ブッ飛んだ世界観で皮肉たっぷり!
機動戦艦ナデシコとの類似点
この「ヴァンドレッド」という作品を観て、一番に思い浮かべた類似アニメは「機動戦艦ナデシコ」です。
主人公のヒビキと、ヒロインのディータとの関係が「機動戦艦ナデシコ」のアキトとユリカと印象が重なります。
これは制作スタッフ、脚本家などが影響を受けているのでしょうか。
しかし「機動戦艦ナデシコ」のヒロイン、ユリカは劇中で艦長という役割を担っています。一方、「ヴァントレッド」のヒロイン、ディータは主人公の3名居るパイロットの一人という位置付けになります。劇中の存在感という観点では、「機動戦艦ナデシコ」のユリカに軍配が上がるのではないでしょうか。
しかし、ユリカとヴィータのそれぞれ主人公に対する想いは同等の強さといえるでしょう。また、ユリカとヴィータの性格という面では天然色が強く、両者のイメージが重なります。
ただ、恋敵という部分では「機動戦艦ナデシコ」のユリカより、「ヴァントレッド」のヴィータの方が多く、困難な状況に追い込まれています。ヴィータの恋敵が一人二人ではありませんので、可哀想に思えてきます。
比較すると、そこの部分は違いが目立つのではないでしょうか。
また「機動戦艦ナデシコ」のユリカと、「ヴァントレッド」のヴィータの決定的な違いは、主人公を呼ぶ呼称のように思います。「機動戦艦ナデシコ」のユリカは、主人公を「アキト」と呼び捨てにします。それに対して、「ヴァントレッド」のヴィータは、主人公を「宇宙人さん」と呼びます。
これは、両者のそれぞれ、相手に対する距離を示していると考えます。明らかにファーストネームを呼び捨てにしている「機動戦艦ナデシコ」のユリカ、アキトの方が距離が近くて、「ヴァントレッド」のヴィータ、ヒビキの距離が遠いことを示していると思います。
それにしても、呼称が「宇宙人さん」というのは少しひどいです。「草生える」という言葉が適している気がします。
また、メカデザインにおいても、「ヴァントレッド」の人型ロボットは、「機動戦艦ナデシコ」のエステバリスに似ているように思います。カラーリングこそ違いますが、デザインそのものは似ていませんか?
しかし、「機動戦艦ナデシコ」のエステバリスは単騎、または同型機が複数で戦闘するスタイルです。そして、「ヴァントレッド」主人公はパートナーのマシンと合体することで、形態を変え、パワーアップして戦うスタイルです。
デザインは似ていても、中身は全然違うものだと思います。「似て非なるもの」といえるでしょう。
男性のみの世界・女性のみの世界
この設定が、この「ヴァンドレッド」というアニメ作品の真骨頂といえる部分ではないでしょうか。
他にもアニメやマンガ、映画、小説など創作物はありますが、その中でも類をみない設定で斬新に映りました。現実社会においても、痴漢などを防ぐため、鉄道に女性専用車両が存在します。女性専用スペースというのは、他にも目にすることが多く、今の流行といえるものではないでしょうか。これが流行で終わるのか、文化として根付くのか、分かりません。しかし、こういった今の現実社会の方向の行き着く先に、この「ヴァンドレッド」というアニメ作品の世界観があるように感じました。
制作スタッフは、社会風刺という意味を込めたのでしょうか。私は意図的に盛り込まれたメッセージ性の強い設定であるように思います。
そして、発想がユニークで観ていて面白かったです。男性のみの世界では、子どもは工場で作られるものと表現されています。確かに男性には、赤ちゃんを宿して出産する身体機能を有していないので、必然的にそうなりそうな気がします。また女性のみの世界では、受精卵をつくり、人工授精することで子どもが生まれてきます。
こういった設定を作り込む上で、色々と考え抜いて制作されたのだろう、と想像することが面白かったです。
またロボット「合体」という部分でも、男性・女性の性行為を示唆しているようで、「釣りバカ日誌」のような軽さがあって笑えてしまいました。「合体」という言葉を性行為に結びつけるように、制作スタッフが意図的に狙ったものだと思います。そして、アニメ作品の中で物語上、ロボット合体であるので卑猥な感じがしません。
イタズラ的な意図が感じられ、登場人物の女性たちが堂々と「合体」という言葉を連呼している様子も、「ヴァンドレッド」という作品の面白みになっていると思います。
登場人物の声が気になる
一発目で面食らうのは、ナビゲートロボット「ピョロ」の声です。「頭文字D」の武内 樹(たけうち いつき)くんの声そのままなのです。声優さんが同じなので仕方ないですが、声優が同じでも、声質を変えることはすると思うのです。しかし、「頭文字D」の武内 樹くんのままの声なので、気になって違和感を覚えました。また、特徴的な声ですし、登場する場面も多いので、「頭文字D」を観ている気持ちにすらなってきます。
それでも見続けていたら、宇宙商人である「ラバット」が登場します。今度は「頭文字D」の藤原 文太(ふじわら ぶんた)が出てきた、と一層に「頭文字D」の色が強くなってきました。
「ピョロ」と「ラバット」は、「頭文字D」の樹と文太の口調そのままなので、イメージがどうしても重なってしまうのです。この二人が発言する度に、頭の中を「頭文字D」が思い浮かびました。
おかげで「ヴァンドレッド」の世界観にいまいち没頭できなかったですが、私だけでしょうか?(笑
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