白銀ジャック読みました。
スキー場を人質にとって、犯人とスキー場側の身代金受渡しの話です。
新月スキー場にゲレンデの下に爆弾を仕掛け、慰謝料の名目で3千万円を要求する脅迫メールが届く。経営者側はスキー場閉鎖や風評被害を考え、また、ゲレンデにいるお客達を人質にとられてしまったことを考慮の上、警察には協力を求めずに、身代金を引き渡して穏便に事件を解決しようとする。しかし、身代金の授受が完了した後も、同じように更に身代金を要求されてしまう。しかし、3度目の身代金の受け渡しの時に、パトロール隊員達の懸命の追跡により、犯人の確保に成功する。だが、この事件の裏には、会社の上層部の人間と地元の役人達が手を組んで、このスキー場のゲレンデの一部を爆破させようとしている事実が明らかになる。
設定は臨場感があります。
滑っている時の爽快感が伝わってきます。ゲレンデの描写は細かいので、目の前にゲレンデを想像できて楽しめる作品です。
ただ、女性スノーボーダーとその従兄弟の空気が読めない感じや、首を突っ込みすぎる感じと、しつこく犯人を追う姿もげんなりでした。多くの人の命がかかっているのに全体的に爆弾事件への緊張感が足りないように思いました。
更に言うと、スキーヤー達のゲレンデに対する熱い気持ちや、新雪を求めて危険を省みずに禁止区域まで足を入れたりいうのは、理解し難かったです。
全体としては、読みやすいです。
ミステリーというよりは、サスペンスです。
前半は、特別引き込まれるところはありません。登場人物はそれほど多くなく、後半になるにつれて、なかなか明らかにならない犯人像にやきもきしながら、犯人は誰なのか、何故、新月スキー場なのかと興味津々で、自然と読むスピードが上がってきます。クライマックスは社会派的要素が絡んでいる割にはその内容に濃密さがなく、詰めが甘いと感じてしまうところもありますが、複雑なトリックも謎解きもありませんが、難しいことを考えずに楽しめると思います。
スキー場側が警察に届けなかった理由や犯人が事件を起こした動機には、ちょっと考えさせらました。どちらの行動に対しても共感できる部分があります。もちろん、来場しているスキーヤー達には何も告げず、避難もさせずに身代金要求に従ったことや、事件を起こしたことに対しては、是とは言いませんが、その心情を察すると、非難の気持ちだけしかない、とは言い難い。利益が取れないと継続は難しいけど、利益重視だけでいいのか。。。そのバランスが難しいと改めて思った作品でもありました。
スキー場が舞台となったサスペンス小説『カッコウの卵は誰のもの』『疾風ロンド』読もうと思います。
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