ストリップ以上でも以下でもない映画
歌、思い出せる?
マジック・マイクは日本ではあまり見かけないが男性ストリッパーを描いた作品だ。
ショービジネスを扱ったミュージカルはほかにもいくつかある。
有名なものでは『シカゴ』『バーレスク』あたりだろうか。
この2つと比べると、どうしても劣ってしまうと思うのは私だけだろうか。
まず、見終わったあとで鮮烈に印象に残る曲がなかった。
ストリップがメインになるからか、ダンスもいまいちインパクトのある演出にかけたように思う。
ショービジネスを扱ったミュージカルは自然に歌とダンスを映画に取り込むことができるので、ミュージカル映画を見慣れていないひとにも見やすいという利点があるが
反対に、舞台の上だけを歌とダンスの場としてしまうとどうしても表現が単調になってしまうように思う。
『シカゴ』の方は舞台以外にも歌とダンスをちりばめ、夢のような世界を表現している。
『バーレスク』はほとんどの歌とダンスが舞台の上だったが、歌手を起用することで歌にこれ以上ないほどの重みをもたせることに成功している。
すっきりしないストーリー
なによりストーリーに問題があったように思う。
実話を基にしたストーリー言うことだったが、確かにリアリティはあるもののキャラクターの「信念」が見えてこない作品はやはり、もう一度見たい作品にはならない。
私個人の持論だが、映画のキャラクターはそれが悪役であれ脇役であれ「正義」や「信念」が無ければキャラクターが生きてこない。肉のない棒人間のようなものだ。
どんな悪役にも悪役の言い分というものがあるはずだ。
どんなに地味な脇役でもそのストーリーの中で生きている限り、自分の信念をもって生きているはずだ。
しかし、主人公のマイクにそれがあっただろうか。
マイクはストリッパーとして働く傍ら、家具を扱う会社を興そうとお金を貯めていた。内心ではストリッパーである自分に自信が持てなかったのだろう。
コンプレックスがあるのは構わないが、最後の方でストリッパーを辞めて彼女のところへ飛び出していくシーンは納得がいかない。仕事を投げ出すのはいただけない。
もっとそこを誰しも納得する形で描けたら、もっとマイクという人間の「信念」がはっきりと表現できたのではないかと思う。
仕事に貴賤なし。目の前の仕事をおろそかにする人間が次の仕事を得たからと言って、その仕事を一生懸命やるとはどうしても思えないからだ。
さらに、マイクの弟分のアダムがかなり曲者だ。キャラクターも行動も目を引くので主役を食ってしまっている。
しかも、準主役と言っていいアダムだが、彼に巻き起こった何もかもが解決しないまま映画は終わってしまう。
ヤクに手をだしたまま、危ない女とも手を切れていないまま、借金もある。
その後どうなるの?
マイクはアダムの姉であるブルックといい感じになるが、そんな弟いて、幸せになれるの?
はなはだ疑問のこるラストだった。
映画にはさまざまなジャンルがある。すっきり終わらない映画があってもいい。それが持ち味の映画はたくさんある。
でも、ミュージカル映画は別だ。
ミュージカルに期待するもの、それは精神におけるカタルシス、つまりストレス解消だ。
普段目にしないきらびやかな世界、歌とダンスに満たされて、明日への原動力を得る。それがミュージカルの醍醐味ではないだろうか。
よくもわるくもストリップ
主役のチャニング・テイタムの肉体美は圧巻だ。
学生時代はアメフトやバスケで鍛えていたその肉体は一朝一夕では成しえない色気がある。
興行収入はダンス映画としては過去最高を誇る。公開は『テッド』と同じ週だったので、その週の最高売り上げ1,2がどちらもR指定という面白い現象が起きた。
しかし、興行収入がよかった割に賞の方は今一つだった。ダラス役のマシュー・マコノヒーがいくつかの助演男優賞をとっただけだった。
調べてみる売上の7割は女性であった。しかも35歳以上がかなりの割合を示している。
これは映画としての成功というよりもストリップショーとしての成功なのではないかと私は思う。
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