「雲のジュウザ」より「雲」らしい主人公
雲のイメージ
アニメという媒体において、「雲」のイメージをもったキャラクターといえば、やはり「北斗の拳」登場人物の「雲のジュウザ」を思い浮かべてしまいます。
さすがに雲のイメージをもつ両者に、似通った部分は多いよう感じます。
第一に、女好きである点が挙げられます。「北斗の拳」ジュウザも、この「浮浪雲」というアニメ作品の主人公、雲においても、表面上の女好きな部分は印象が重なります。とくに、女性に向ける優しさという部分が両者共通の魅力になっており、モテるという事実も似ているように思います。
そして、女好きというキャラクターに反して、本命の女性に対しては一途な面である点も共通点として考えられます。「北斗の拳」ジュウザはユリアに対して、その愛情の強さは自らの命すら投げ出すほどです。そして、「浮浪雲」主人公の雲も、奥さんに対しての愛情は、他の登場する女性キャラクターより明らかに深いように感じられます。
そして、権力に属さないイメージも両者に共通しています。あくまで、自分自身の意思が、自分の行動を決定する要素のようです。「北斗の拳」ジュウザも、自らの将の正体を知らない時点では動こうとはしませんでした。自らの将の正体を知った時、初めて命懸けで、行動をはじめます。「浮浪雲」主人公の雲も、サムライという立場ながら、風貌は遊び人であり、忠義を尽くすタイプではありません。しかし、目の前で救うべき人、そして、自分の子どもの為には手間を惜しまず行動するようです。
自分自身の意思を貫く、という姿がカッコ良く、両者の魅力になっているように思います。
子煩悩な父親の姿
父親という観点でみた時、どのように捉えることができるでしょうか。まともに仕事もせず、遊び歩いてばかりの父親は情けないようにみえます。基本的には、ダメ人間や怠け者の印象が強いです。しかし、遊んでばかりのように思えて、子どもの行動には目を向けていることが伺えます。
また、子どもたちの主体性・自主性を重んじており、否定することがない姿は素晴らしいように思います。親という監督責任はありながら、子どもたちの人格を尊重して育んでおり、良いお父さんである姿が印象的です。普段はダメ人間でありながら、子どもに向けている関心は強くて、行動力も高い部分の二面性が最大の魅力なのでしょう。
そして、子どもたちの人格を尊重する姿は、親である視聴者に対して、子育ての有り方を訴えているように思います。子どもには子どもの考えがあり、闇雲に否定してはいけない、子どもの人格を尊重することの重要性を説いている気がします。自分自身、子どもに対しての向き合い方を改めて考える機会を与えてもらっているように感じました。また、子ども達に手間やお金をかけるものの、どこまで子どもの行動に関心をもっているのか、行動の変化に気付いてあげられるのか、考えさせられます。
また、自分の子どもを、どこまで信じてあげられるのか、それが子どもの人格を尊重する礎になることも描かれていたように思います。
家宝の刀を持ち出し、上級生に立ち向かった新之助の姿は感動します。また、刀を持ち出そうとする新之助を受け入れ、立ち向かわねばならない場面であることを察して、新之助を送り出した雲の姿が印象に残っています。自分自身が同様の場面を迎えた時、どんな言葉を送ってあげられるのか、どんなことがしてあげられるのか、改めて考えておくことも必要だと思いました。
しかし、全ては、まず我が子を信じてあげるところから始まるのではないでしょうか。
そんなメッセージ性をとても強く感じるアニメ作品だったように思います。
恐ろしいほどの強さ
ふわふわした風貌から、信じられないほどの強さであることも雲の魅力なのかもしれません。その二面性は、「シティーハンター」主人公の冴羽リョウを思い浮かべさせます。
両刃の得物を振り回して闘う様子が印象的で、アニメでは登場しませんが、原作マンガでは居合の達人でもあるようです。アニメの中でも、居合の剣術を披露してほしかったです。
新撰組の隊士と戦う場面では、竹やぶの中を仕合の場所として選び、雲の長い得物を封じています。また、得物の長さによる間合いを補うため、飛び苦無を使います。しかし、その状況下であっても、死角となる頭上から飛びかかるような攻撃をして、雲が勝利を収めます。戦う場面において、苦戦することないことも特筆するべきことなのでしょう。喜怒哀楽のうち、怒る感情、哀しい感情がないことが描かれていないことが象徴だと思います。
雲に勝つ為には、身を斬らせる覚悟で一気に間合いを詰め、一撃のもとに骨を断たねば勝てないでしょう。雲を見ていると、苦戦する、また負けてしまうイメージがまったく持てないのも、良いのかもしれません。
逆に不思議に思うのですが、多かれ少なかれ、戦う場面においては、主人公が苦戦して勝つことが定石ではないでしょうか。しかし、漂々とした表情で勝つ雲は、雲のイメージを決して崩すことがない印象を打ち出している気がします。
こういったところは、特徴ある主人公で、ユニークなアニメ作品であることを改めて感じさせます。
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