喜怒哀楽の全てが集約されたアニメ作品
なんでもありなのか!?
宇宙船に乗っている調査員らしき人物が、魂だけをクレオパトラのいた世界に旅立たせる、という設定で物語が進行していきます。しかし、それらの設定の意図するものが全然分かりません。この冒頭部分の描写は、アニメ作品の中で不要な部分だったように思えてしまいます。
また、色んな漫画・アニメのキャラクターがチラチラ見え隠れします。物語には一切関わらないことから、きっと出オチなのであろうと考えられます。クレオパトラが題材であることから、基本的にはエジプトとローマが舞台になっています。しかし、必然性もなく突発的に、鉄腕アトムなど登場すると面食らってしまいます。基本路線としては、クレオパトラの悲劇を描いていますので、作品そのものが暗いものになってしまいます。しかし、他の有名アニメ作品のキャラクターが度々登場することによって、笑わせるように仕組まれているように感じます。自由に制作されたアニメ作品であることが伺えて、やりたい放題という印象を強く感じました。
抽象的な表現が多用されているのも特徴的だと思います。性描写の部分では、大人向けであることから、そういう場面は多いように感じました。しかし、性描写に付き纏う下品な印象は薄く、抽象的な表現をすることで抑えられています。きっと女性が観ても嫌悪感を抱く方は少ないのではないでしょうか。そういった明確な狙いがあって、取り入れた表現なのだと思います。
アニメ作品そのものの芸術性を高める為、抽象的な表現を多用している、という意見もあるのかもしれません。しかし、芸術性を求めたものではなく、明確な意図があってされている抽象的表現を使っているものと考えます。その理由としては、抽象的な描写をしている場面の多くが、性行為を指す場面で使われているためです。きっと女性に対しての配慮といった、制作スタッフの意図なのだと思います。
報われないクレオパトラ
クレオパトラは政治利用される為、顔や身体のかたちを整えます。そして、エジプトを侵略しようとローマより遠征してきたシーザーに身も心も捧げます。しかし、クレオパトラ自身の本心がどうなのか、その部分が描かれていません。
周囲の環境に流されるがまま、というように受け取れます。少なくともクレオパトラがシーザーの子どもを授かった時に嬉しそう表情は皆無でした。逆に産むべきなのか、悩んでいる場面があったことが印象的です。クレオパトラは、シーザーのことを本心では好きになれなかったのだと思います。また、好きになってはいけない状況だった、と考えることもできます。この場面において、クレオパトラの気持ちはエジプトという国を守ることにあり、目的を果たす為、シーザーと結ばれています。当初は、シーザーの油断しているところを殺してしまう計画でした。しかし、クレオパトはシーザーを殺すことができませんでした。クレオパトラ自身がシーザーを殺してしまうことを躊躇ったのです。
この部分をどう受け取るのか、判断が観る人によって、分かれるポイントなのではないでしょうか。クレオパトラはシーザーを愛していたのか、愛していなかったのか、と受取る人によって意見が別れるところだと思います。
また、シーザーにはローマに本妻がいました。そして、クレオパトラと本妻で、シーザーを取り合う場面も描かれていました。シーザーはまともな精神状態ではありませんでしたが、朦朧とする意識の中で本妻を選んでいました。
クレオパトラの本心
クレオパトラは、シーザーとやりとりでは、エジプトという国の安定と平和しか考えていなかったように思います。シーザーをエジプトに連れて帰ろう、本妻から奪おうとしたのも、エジプトを守ろうとした意図が強いように感じます。また、シーザーを殺さなかったことも、良心が働いて殺せなかった、ということが大きいのではないでしょうか。
そして、ローマから次にエジプト遠征にやってきたのはアントニウスです。しかし、クレオパトラのアントニウスに対する感情は、シーザーの時と明らかに違ったように感じました。
クレオパトラはアントニウスのことを、本気で愛していたのではないでしょうか。いまいち、自分自身に自信がないアントニウスというキャラクターでしたが、男として自信を持たせたのはクレオパトラでした。
しかし、周囲の状況に流されるクレオパトラは、結果としてアントニウスを殺してしまうことになります。アントニウスが瀕死の状態で、クレオパトラの元に辿り着いた場面では、互いに両想いだったことを表現されていました。
結局は、エジプトの為に身を挺するクレオパトラですが、自分自身の幸せを掴むことができません。そして、シーザーに続いて、アントニウスという存在があったことで、今後もこのようなことが続き、終わりがないことは明白です。
そして、物語の最後で、クレオパトラが初めて自主的な行動に出ます。この状況から逃げること、そして、逃げ切れずに自ら死ぬことです。この皮肉の部分が、「クレオパトラ」というアニメ作品の描きたかった本筋なのではないでしょうか。
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