障害者の生きる道 - 聖者の行進の感想

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聖者の行進

4.434.43
映像
4.50
脚本
4.50
キャスト
4.50
音楽
4.17
演出
4.33
感想数
3
観た人
6

障害者の生きる道

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
5.0

目次

障害者は、弱くない、強いのだ。

1998年この作品が放送されて私の中で衝撃が走った。なぜこのようなことが起きてしまうのだろうと悲しみでいっぱいになった。私はまだ結婚していなかったので実家で暮らしていた。私の実家には身体障害者のおじさんが一緒に暮らしている。私が生まれる前からずっとおじさんとは一緒だった。だから彼が人と少し違うと感じることはあったが、その障害についてどう思うとか考えた事もなかった。歩いて3分ほどで着く祖母の弟の家で働いていた。仕事は本当に真面目にやっていた。お昼休みには家に帰ってきてお昼を食べてまた仕事場に向かう。冷暖房のない工場で働いていたのだ。何度め通い慣れた道だから1人でも歩ける。言葉はきちんと喋れない。知らない場所で1人になるとパニックになり大声で叫びながら泣きだす。障害者は人の助けがいります。健常者と比較すると違うところがあります。ですが、どちらにも幸せになる権利があり何事も平等なのです。それを理解出来ない人は、障害者よりもずっと重い障害があるのではないかと感じてしまう。この作品では、そういうキャラクターが多く存在しているため、見るのが辛くなってしまう。しかし初回から最終回まで欠かさず見ていたら、辛いという気持ちよりも”怒り”が込み上げてきていた。障害があっても必死に生きている人が沢山出てくるが、なぜそれを見て傷付けることをするのか。私にはさっぱり分からない。一生懸命な人の邪魔をして笑っている工場の社長(段田安則)。何がそんなに楽しいのか分からない。高い声に大きな声で楽しそうに笑う社長の息子の三郎(デビット伊東)はどうかしてると思う。見ていて非常に腹が立って涙が出た。自分よりも弱い人間をいじめて、強くなったような気になっているのかもしれないが、そんな事は絶対にあり得ない。なぜなら社長の息子や、社長は、工場で働く障害を抱えている人たちよりも、初めから弱くて最低な人間だからだ。本当に弱すぎる。比較する必要がないくらいだ。

障害を持つ人は本当に強い。健常者からみたら不便で大変な事ばかりだろうと感じるが、障害を持つ事を”個性”だという人がいる。本当に強い人たちだ。健常者の方が見習うべき点がたくさんあるように感じた。この作品の狙いは、障害を持つ人の強さを視聴者に伝えることではないだろうか。決して、作品を見て可哀想など同情心や涙をあおりたいわけではない。本当の強さを、皆に感じてもらうため、見てもらうために、この作品はあるのだと私は心から思う。

知的障害者と健常者の境界線は、健常者が作るのではなく、障害者がどう思うか、にある。

笑う権利は誰にもある。意見を言う権利も、断る権利もある。みな平等に毎日を過ごし、楽しい事があれば大声で笑っていい。辛かったら、嫌だとはっきり言っていい。助けが必要なら、叫んだっていい。障害者と健常者の間に変な境界線を引く必要はないと思う。全て両者に必要なことであり、権利である。工場で働く知的障害者の町田永遠(石田壱成)は、純粋でとても素直で優しい。卑劣なことをされても微笑み返してしまうのだ。その姿は本当にただ純粋にされる必要もない罰を受けてあげようというようにも見えた。正義感が強く自分の仲間の水間妙子(雛形あきこ)が暴行を受けた時には、必死に助けた。妙子は、軽度の知的障害者で、可愛い外見から工場の社長に目をつけられていた。コスプレをさせて襲い、妊娠までさせるのだ。この社長と息子はどうかしているのではないかと思うくらい、最低な人間だ。まるで悪魔の様だと見ていて思った。彼らが暴力を受けているシーンは、まるで地獄を見ているかのという様な恐ろしい気持ちになった。

焼死した社長は罪に問われないのか。社長が永遠に示した、最初で最後のつぐない。

高原鈴(松本恵)は、最も重度の知的障害者です。簡単な会話くらいしか出来ない彼女は、いつも『お嫁さんになりたい』と言っていました。それは、彼女自身の意見、気持ちです。無邪気な姿がとても可愛くて、何故このような人に暴力を震えるのかが分からない。鈴には、不思議な力がある。知的障害者であるが、目で見えないものを見る力があった。妙子の妊娠を当てるシーンもあった。障害があっても彼女には、そんな素晴らしい力がある。なぜ、そこをもっと見てあげなかったのだろう。

彼らが働いていた工場の社長は、知的障害者を職場に雇ったことで地域では、非常に良いようにうつり、地域の人の前では、暴力などする人には見えないほどの笑みを浮かべる。だから、永遠たちの家族も疑うことなく安心して息子を預けていたのだろうと思った。でも親ならもう少し必死に息子の様子を気にかけるべきであったと思う。預けた親にも責任はあるだろう。

最終回で工場が火事となる。焼け跡からは、社長の焼死体が発見される。永遠は、最後社長に助けてもらい、マンホールの中に入れてもらう。社長の最初で最後の優しさは、私を何とも言えない気持ちにさせた。永遠を助けたがこれまでしてきた罪が消えるわけではない。社長が亡くなったということは、罪に問われる事も、重い罰を問われる事もないのだ。こんな事は決してあってはいけない。永遠たちが演奏する”聖者の行進”を耳にすると、必ずこの作品を思い出す。

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問題描写があるからこそ、真の問題が浮き彫りになっているこの作品では、知的障がい者を差別的に扱うシーンがかなりあからさまに表現されている。主人公永遠を、弟の友達たちがボールをぶつけて集団でいじめるシーンや、年頃の女性である妙子を授産施設の社長が強姦する、授産施設の男性が下着泥棒をしてしまうなど、今だったら抗議がありそうな描写がかなりたくさんある。しかし、過ちや歪んだ解釈を克明に表現することで、そういった差別や誤解から立ち上がり、幸せをつかもうとする登場人物たちに姿が、非常に鮮明になっている。かえって、もし社会の水面下に知的障がい者を差別する目が少しでもあるなら、かえってそういうものは「間違っている」と訴える意味でも、隠蔽するのではなく表に出して是正をすべきだと思える作品である。偽善について考えさせられるあからさまに障がい者福祉を自分への評価に利用している、竹中製作所の社長は、障がい者雇用...この感想を読む

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