市川崑の細雪 - 細雪の感想

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細雪

4.754.75
映像
5.00
脚本
4.50
キャスト
5.00
音楽
4.00
演出
5.00
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市川崑の細雪

4.54.5
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
5.0

目次

映像表現がさすがである

始まりから映像に魅せられる。女優達の顔アップからしかも、カットの切り替えの早さにドキドキさせられた。昭和初期という昔を舞台にした、作品自体も古いものだからと高を括って構えていたのもあり、目を一気に覚ませるものであった。4人の女優は皆美しく、気迫があるので、安定的なバストショットではなく、顔アップにされるとその女優たちの魅力はさらに引き立つ。しかも、セリフの掛け合いを超えるぐらいのカットの切り替えの早さは、女優達の芝居の掛け合いの強さをさらに助長させる。こうして短い冒頭のシーンだけで、これからまさにこの女4人の物語が始まるのだとしかと印象付けられるわけである。また、貞之助が雪子の口元についてセリフで触れるところもあり、そのセリフに繋ぐために顔アップのカットを重ねてきたのではないかと思うと、さらに感心する。女の口元を映すと、ああも色っぽいのかと、市川崑監督の女を捉える視線を意識させられた。

さらに面白い映像表現は突然と白黒の映像が入ってくることだ。正直いきなりすぎてしかも芝居の内容が警官に連れ出される二人というもので、チャップリンにでもありそうなコントのようで、いきなりどうしたものかと驚かされる。回想のシーンとは言え、いきなりすぎて少し安っぽい印象も受ける。しかし、その後赤を基調としたシーンが現れ、終盤では緑を基調としたシーンを魅せられると、先ほど馬鹿に仕掛けた気持ちなど一瞬で飛んでいく。他の作品でも赤を使って妖艶さを表現しているものは多く、新しいわけでもないが、本作は白黒、赤、緑と三色を使ってきたのがミソである。妙子と奥畑とのシーンでは白黒を、板倉とのシーンで赤、三好とのシーンでは緑と、妙子の移ろう恋模様を映像の色合いでも表現しているのではないかと思う。そう考えると、この映像表現は実に面白い。妙子の三人の相手役はそれぞれでキャラクターが違い、それを象徴するような色彩を使っているのではないかと感じた。こういった遊びを入れ込んでくる市川崑監督はさすがだなと感じる。

また、遊びもありつつ全体はとても丁寧なのである。特に最初の桜、紅葉、雪と日本の四季の美しさを綺麗に切り取って描き、紡いでいるのが素敵である。雪はタイトルにあるぐらいのだから勿論綺麗に撮って当たり前なのだが、その前の桜と紅葉を織り込んだのがいい。この景色が女優の美しさを助長させ、谷崎潤一郎の繊細な小説の世界観を作り出した。

終始市川崑監督の映像表現にやられ、映画ならではの小説の世界を堪能でき、最高であった。

これぞ日本女優か

女優陣が本当に素晴らしいの一言である。役者の演技も素晴らしく、また役そのものも4原色がくっきりしていて、作品の豊かさを感じた。

まず、長女だが本家に縛られている融通の利かない意地の張り具合が絶妙である。それだけにラストで本家のこだわりを捨てたときの晴れ晴れしさが一本の物語上、スカッと気持ちのいいものであった。岸恵子の長女として、妻としての気丈な姿の垣間に見えた幸子とのあどけない笑顔や辰雄に対して怒ったり寄り添ったりする姿が可愛らしく良かった。

次女は分家としての本家に対しての気遣いに、雪子と妙子の将来のために振り回されたり、はたまた夫が雪子と怪しかったりなど、ザッ苦労人である。その苦労度を佐久間良子はしかと背負っており、逆に貞之助役の石坂浩二が少し若々しすぎて、夫婦としてのアンバランスさを感じてしまったぐらいである。

三女は何を考えているのか読めないのが恐ろしかったが、ラストに姉二人が言うように粘ったかいがあった結末には面白さがあった。吉永小百合の口元や、目遣いが色っぽいし、ややいやらしさがあり、とても良かった。

四女は本当に奔放で、いかにもののキャラクターであるが、その的を外さないのがしっくりくる。古手川祐子には吉永小百合と全く正反対の雰囲気があり、この問題児二人という構図を際立たせ、作品を面白くさせたと思う。

この豪華な日本女優の中、印象深いのはやはり鶴子と幸子の掛け合いである。冒頭のけんかっぽいシーンでの目でのやりとりをする芝居や、帯を選ぶ時のわちゃわちゃした仲良さそうな芝居など、二人の女優の醸し出す姉妹の独特な空気は素晴らしかった。雪子が羨ましがるのも納得である。こういった芝居が観られるのはこの時代の女優だからこそなのか、それとも市川崑監督の力量なのか、実にこの時代が羨ましいと思ってしまった。

駄目そうな男がいい

市川崑作品ならではの男たちだと思うが、物語上、婿養子という設定もあいまって伊丹十三と石坂浩二のダメんズたちはいい味を出していたと思う。特に辰雄の東京行きが決まった時の二人の連帯感は微笑ましい。男としてはやはり出世が大事であり、それを互いに分かり合い、味方する貞之助とそれを心強く思う辰雄。新聞事件の時の辰雄が鶴子に健気に尽くす姿や、雪子との不倫を疑われた際の貞之助の取りなす姿と、二人の情けない姿を見ているだけに、この連帯感は二人の唯一の強いシーンだと思い、なんだかクスりとする。女優陣が素晴らしいだけではなく、この二人が素晴らしいことで作品に味わい深さが生まれたのだと思う。

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いつまでも心の奥底にそっとしまっておきたい宝石のような、市川崑監督の日本映画の珠玉の名作 「細雪」

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5.05.0
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