業
妖怪の総大将・ぬらりひょんの孫である奴良リクオが、祖父の代から続く奴良組の三代目となり、様々な敵勢力との戦いを通して成長していく姿を描いた妖ファンタジー作品。この作品では怨念渦巻く京都の総大将・羽衣狐との因縁を描いた第2期である。
この羽衣狐という妖、実はかの有名な陰陽師・安倍清明の母・葛葉と悪名高い九尾狐(またの名を玉藻前)を組み合わせたキャラとして描かれている。人に宿るごとにその尾が一本ずつ増え、徐々に「やや子」を産む力を蓄え続けた狂気ともいえる母性と、人間相手では冷酷かつ残虐なほど美しい姿で殺していくという、まさに美しき悪役というのにふさわしかった。
依り代として山吹乙女(鯉伴の前妻)に取りつき、漆黒に彩られた見目麗しい姿で現代へと蘇る。冷徹だが儚さを含む幻想的なあの笑みは私の心をすぐさまとらえた。まるで蜘蛛の巣のように、するりと。
しかし、そんな彼女も目的にはとても一途な面もあった。
「やや子」である清明を産むことに1000年間も費やしたのだ。ここが彼女の人間味を象徴しているところだった。
かつては人の営みを見て愛していたのにも関わらず、強欲な人間たちに殺されて欲望のために利用される。非情な妖となってしまった彼女の中で唯一残っていたのが皮肉にも母性だった。人間を憎みながらも子に対する愛情は人間と同じ。彼女はリクオと対峙しているとき、乙女の記憶に触れて錯乱したのは自らが否定し続けてきた「人間のような」愛情があるということを突き付けられたのではないか。半妖でありながらも依り代である乙女を愛した鯉伴の面影が、人と妖の理想郷を作るために奮闘していたかつての息子・清明と重なったからではないのだろうか。
解釈は人それぞれ。また羽衣狐に会えることを楽しみにしたいと思う。
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