撃ちまくれ頑固爺!
クリント・イーストウッドの渾身作『グラン・トリノ』
ものすごーくオーソドックスに作られた、ものすごーくシンプルな映画というのがまず第一の感想です。
基本に忠実に伏線を引いていて、場面ひとつひとつ、台詞ひとつひとつを無駄にしないからシンプルだけど味わい深い。
カッコつけて「イーストウッドの渾身作」と前述しちゃいましたが、本音は映画を極めた者が迷いも躊躇いもなくただ職人の業を振るっただけといった印象が強いです。
これは社会派映画ならではの宿命めいたものかもしれませんが、良く言えば「メッセージ性が強い」、悪く言えば「説教くさい」ですね。
ちなみにこういう作品ってキネマ旬報なんかじゃ好かれるんです(笑)
てなもんでイーストウッドの作品は観る前からハードルが上がっちゃうわけですよ。
しかしまあ撮り方が基本に忠実と言いますか。
必要以上には説明しないので無駄がないと言いますか。
そりゃあ『硫黄島の手紙』のような画面から溢れ出しそうなくらいのエネルギーのようなものはないですよ。
闇に覆われ暗黒に吸い込まれるような『ミスティック・リバー』
玉砕覚悟のカウンターパンチを撃ち抜かれるような『ミリオン・ダラー・ベイビー』
一方的な悪意により呪いをかけられたような『チェンジリング』
テーマは暗く、重苦しい。
しかし比較的シンプルな『グラン・トリノ』がそれでいて味わい深い。
加えて観る側もリラックスして観れてしまうのだからこれはとてつもない。
そしてそれは間違いなく役者クリント・イーストウッドのための映画だと思います。
無名な俳優を並べたことでも存在感が際立っいてます。
「主演男優賞ください」という企みすら感じます(笑)
それでもやっぱり作品賞や監督賞に値する作品だと僕は思いますけどね。
いやー、それにしても年配の大人たちが苦しんでいる今の時代において、イーストウッド様の存在は偉大すぎる。
その姿に思い知る。
ホンモノの闘い!
ホンモノの恐怖!
撃ちまくれ頑固爺!
この世に散乱するどうしようもない若者たちに人生の重みを刻むのだ。
そしてそこにホンモノの希望を…
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