はだしのゲン~中沢啓治~
自らが経験した実体験を元に、戦争と原爆の悲惨さを訴える中沢啓治氏の代表作です。
物語の序盤に原爆が投下され、以降は戦後の日本を生きるゲンたちの姿が描かれていますが、これは戦争や原爆そのものだけでなく、それらが戦後の世界にどのような影響や苦しみを残したかを強調するものとなっています。
生き残ったにも関わらず原爆の後遺症で苦しむ人、戦場で負った心身の後遺症から真面な社会復帰が妨げられている人、親兄弟をすべて失い犯罪に手を染めてまで生き抜く浮浪児の存在によって、戦争はそれに関わる全ての人を不幸にするというメッセージを常に伝え続けています。現在も安保法制や憲法改正の議論が各所で続けられていますが、戦争そのものだけでなく、戦争が戦後の世界に何をもたらすかまでを考えて議論している人がどれほどいるでしょうか。
また、ゲンや隆太ら主要人物が綺麗な女性に目がなかったり、時折ふざけた描写が描かれているのは、「子どもにも読みやすいように」という中沢氏の配慮に加え、今も昔も子どもというものは本質的には変わらないものであり、彼らにより良い未来を残すのが大人の役目であるというメッセージを伝えるものではないでしょうか。
思想の左右を問わず、戦争や過剰な武装が究極的には何をもたらすか、我々が今一度立ち止まって考えなくてはならないということを思い起こさせる作品であるといえます。
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