ミイラより妖術のほうに重点をおいたようなストーリー - ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝の感想

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ミイラより妖術のほうに重点をおいたようなストーリー

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

秦の始皇帝とアー・シン・ハン皇帝

歴史的には秦の始皇帝が、それまで各国で造っていた城壁をひとつにし「万里の長城」の建設に力を注いだと言われています。この映画では皇帝となったアー・シン・ハンが建設したとなっていますが、秦の始皇帝の名前がアー・シン・ハンだったわけではありません。建設にまつわる史記には敵だけでなく、作業中水も食料も休憩もない過酷な労働条件の中、ケガや病気で作業ができなくなった者、反乱を起こした者、逃亡しようとした者などを生きたまま人柱にしていたという記述が残っています。恨みを持って死んでいったものが多いため「万里の長城」では、怪奇現象を体験したという人も少なくないようです。また不老不死を願い、不老不死の薬を求めるための探索には多くの人員と財貨を費やしたようです。力による恐怖政治と不老不死を求めていたところからも、この映画の皇帝のモチーフは秦の始皇帝だったと思ってよいではないでしょうか。

アー・シン・ハン皇帝は武術にも長けていて、刺客を送られても自分で倒してしまい、部下たちは皇帝を守るのに役に立っていないような状態です。ただでさえ強いのに火・水・木・金・土の五元の要素を操る秘術まで取得したのだから、向かうところ敵なしといったところでしょう。復活後も三つ首竜や巨大な熊に変身して襲いかかりますが、これも秘術の一部だと思ってもよいのでしょう。

サンスクリット語と言霊

サンスクリット語とは古代インド・アーリア語に属する言語で、日本では梵語として使われている言語です。サンスクリット語は、ひとつの音そのものに言霊が宿っているとされ、正確に発音することでその力が発揮すると言われています。日本では陰陽師が印を結びながら呪詛に使っている場面がよく見られます。「印を結ぶ」という行為は言霊の持つ意味を象徴的に表現しているもののようです。この映画ではサンスクリット語でツイ・ユアンが呪いをかけたりしています。それだけ強い妖術師といったところなのでしょう。

言霊はサンスクリット語だけに限らず日本語にも存在すると言われています。日本は「言霊の幸ふ国」とも言われていて、言葉が現実に影響する力があることを身近に感じている国といえるでしょう。現代でも、受験シーズンになると「スベル・オチル」といったり、結婚式では「ワカレル・キレル」といった言葉を口にしないようにするのは、言霊の影響を考えてのことでしょう。映画などで呪文を唱えたり印を結んだりするシーンがありますが、修行を積んだもの以外が正確に発音し印を結ぶと何が起こるかわからないということもあり、発音の仕方が不正確であったり、結ぶ印の形を正確に見せないといったような工夫がされているものもあるようです。

「墓荒らし」と「墓を守るもの」

この映画でいう「墓荒らし」は、発掘調査に参加しているアレックス・オコーネルとロジャー・ウィルソン教授のことで、「墓を守るもの」はリンとツイ・ユアンということになります。皇帝の墓を発掘する際、皇帝にたどり着くまでにいろいろな罠が仕掛けられています。それはどれも一歩間違えれば死に直結する罠ばかりで、一緒に発掘調査をしていた作業員が何人も犠牲になりました。アレックスとウィルソン教授は罠を仕掛けたのは皇帝たちで、墓を荒らされないように仕掛けていると思っていたようです。しかしリンたちが墓を暴こうとするアレックスたちに攻撃していたのを見ると、墓を守っていたのはトレジャーハンターから財宝を奪われないようではなかったようです。皇帝を復活させようとする者たちから、皇帝を復活させないように墓を見張っていたというのが正しいようです。

リンとツイ・ユアンは皇帝の復活を阻止するために、シャングリラで不老不死の力を得ています。そして、アレックスをかばって刺されたリックを、泉の水を傷口にかけることで瀕死の状態から救い出します。皇帝は確かに自分勝手で、冷酷非道な上に武術・秘術まで操るという復活させては危険な人物かもしれません。では、リンとツイ・ユアンはどうでしょう。二人とも皇帝の復活を阻止するために不老不死になり、本当は不老不死になりたくてなったわけではなく、普通の人間として暮らしたかったと思うのが普通でしょう。しかし少しいじわるな考え方をすると、自分たちが不老不死になるのは善のためなのでよくて、皇帝が不老不死になるのは悪(自分の利益)のためなのでダメなの?という考えがでてきます。自分たちの子孫に墓を見張るという責務を負わせたくないために、自分たちが犠牲になったとの見方もありますが、不老不死自体が自然に逆らうことなのであれば、どんな理由があろうと不老不死はダメということになるのでしょう。

余談ですが・・・

個人的に一番好きなシーンはミイラとミイラが戦うシーンで、ヤン将軍側のミイラですが、味方のミイラの頭をもっていたスコップで振り向きざまに落としてしまい、あわてて頭をくっつけようとするといった間抜けなミイラがいました。ストーリーとはまったく関係はありませんが、あわてるミイラの動きがとってもキュートでした。

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