読もうと思ったきっかけ
この本を読もうと思ったきっかけは、人間失格とはどのような意味で捉えているだろうか?と疑問に感じたからでした。
凶悪犯罪を犯しすような、世間から卑劣な行いをした人間を指すのか、何か憎悪を抱くことが起きてしまった相手を指すのか、あるいは自分を卑下しているのか。
しかし読んでみると、どれにも当てはまらないものでした。
物語は、主人公がふとした事がきっかけで手に入れた手記を読むところから始まります。
その手記を書いた人物が、自らの生い立ちを振り返り、自分を人間失格と言っているのですが、自らを卑下して言っているわけではないと思われるのです。
文中「人間で無くなりました」とは、どういうことなのか。
人として生きられなくなったとはどういうことなのか。
彼の行動は、周囲から見れば自分を追い詰めているように見えるかも知れないが、一生懸命、今を生きていたようにも思えるのです。ただ、嫌なことは嫌だと素直に言えなかっただけではないかと。
使用人を抱え、生活に何不自由ない環境で育った彼ではあったが、家父長制度が色濃くあり時代、兄弟の多い末っ子である彼は、幼少期からいつも自分の居場所を探していた。富豪の家とはいえ、彼の部屋すら無かった。
NOと言えない日本人は、今の時代でもまだ多い。例えば、思春期の頃、好きでもない人から告白されて、嫌いでもないからとりあえずYESと言ったり、万引きしていないのに、していないとハッキリ主張出来なかったり、大人になっても家族よりも仕事を優先して、休日出勤や飲み会に出てしまったり、年齢関係なく例は多い。
彼は手記の最後に
「いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。
自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂『人間』の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。」とある。
人間で無くなったものに、真理まで見つけることは出来ないよ、そう彼に私は伝えたい。
その時、その時を悩み考え行動して来たことは、人だからこそ出来ることではないだろうか。唯一、悩み考えて行動出来るのが人間ではないだろうか。
この本を読んで改めて、人間とは、人として生きるとは何かを考えさせられました。
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