堂々とした教育的ダークヒーロー。だが、主題歌はかわいい(笑)
いまでもやってはいるのだろうけれど、もうなかなかみることがない「ひらけポンキッキ-ズ!」のワンコーナーだった「花子さんがきた!」。
もう年齢がバレバレだと思うが、
♪ほわほわ ほわほわ はなこさ~ん♪の主題歌は未だに歌えてしまうほど私の中でインパクトに残っている。
なにせ、「幼稚園児がみるもの。」と思っていた「ポンキッキ-ズ!」で怖い話?しかも、あの有名なはなこさん?!(笑)と、まだまだ純粋だった幼い私には衝撃的すぎて興味を持たないほうがおかしいくらいの内容だった。
これこそが、テレビをつくる大人たちの思惑だったのかもしれないが、それにまんまとハマった小学生は、私だけでない。むしろ、ほとんどの小学生が思惑にドハマリしていたようだ。なぜなら、登下校時にさっきの主題歌をみんなで大合唱して帰った思い出があるから…。楽しかったな(笑)
だから、きっと私以外にも主題歌を歌える人はいるはずだと信じている!(笑)
しかし、この「花子さんがきた!」が、なぜここまで小学生をひきつけたのだろうか?当時を振り返りながら考えてみる。
【誰もが知っているおばけたち】
小学生になると、学校の七不思議のようないわゆる学校の怪談のはなしをきいたり、興味を持ったりする。「こわーい!」といいながらも怖いもの見たさや旺盛な好奇心がみたこともないおばけへの興味となっているのではないかと思う。
これは、いつの時代もそうであるようだ。いまでは某赤い猫が出てくる妖怪のはなしが、現代の妖怪として小学生達をとりこにしている。その現代の妖怪の中にだって、昔からいる「人面犬」「口裂け女」が出てくる。もちろん「花子さん」もエントリーしている。
このみんなが知っていて、親しみを持っているおばけたちが出てきたり、「出てくるだろう。」と期待がもてることもこのアニメの魅力のひとつだと思う。アニメをみるとっかかりがすでにあったのだ。
番組内のワンコーナーとして、10分程度の話で、一体どんな風におばけたちがでてくるのか?もしかしたら、そうやって自分の目の前にもおばけが現れるかもしれない?!と小学生たちは自分の身を守るためとしてアニメをみていたのかもしれない。
【花子さんの新しいスタイル】
「トイレの花子さん」ときくと、だいたいの人が「女子トイレにいる女の子の幽霊」と答えるだろう。
しかし、この「花子さんがきた!」では、そんなジメジメしたようなくらーい花子さんではない。
確かにトイレでも出てくる。しかし、この花子さんは戦うのだ!
スカートにつけているチューリップのアップリケをつかって、悪いオバケをやっつけるいわゆる「ダークヒーロー」的花子さんなのだ。(やっつけるというよりも除霊?)
これは、もう目からウロコ。「えええーーー!!花子さん怖がらせないのーーー???」と天変地異が起こったこなような衝撃をもたらしたものだ。もう、小学生の心は鷲掴みである。
しかもなかなかアクティブな花子。居場所はトイレだけにとどまらない。屋上・廊下・教室はもちろん、各ご家庭にも伺うこともある。いや、いや、花子さんはトイレにいるから「トイレの花子さんなんじゃないの?」と思ったものだ。
だが、それが間違っていた。なぜなら「花子さんがきた!」なのだ。花子さんがむこうからこちらにやってきちゃうのだ!
「人面犬」「口作女」「ダッシュババア」は、向こうからくることをどの小学生も知っていた。でも、花子さんは違う。花子さんは、トイレにこちらが行かないと会えないはずのおばけだ。と世間的には思われていた。それが、トイレから飛び出そうとは誰もが思わなかっただろう。
それだけではない。ストーリ―テラーとなり、オムニバスの話をすすめる役割もこの花子は担っているのだ。
「花子、タ○リじゃん。」
と友達と話していたことをよく覚えている。
お化けたちが巻き起こしたり、子どもたちが巻き起こす騒動を俯瞰して見ており、解説も親切にしてくれる。この解説が小学生には大切なのだろう。「これをすると怖いことがある。」「だから人の話を聞かなくてはいけない。」と花子さんたちお化けを通して、生きていくための基本知識を学ばされていた気がする。
【自業自得をストレートに伝える内容】
先にも書いたが、番組内の分程度のワンコーナーだった「花子さんがきた!」。だが、内容は随分と濃いものだった。
お化けに襲われた子どもたちをヒーロー花子さんが無条件で助けることがあたりまえではない!と気持ちが良いくらいに伝えていたのだ。行き度となく、お化けに襲われっぱなし。むしろお化けになちゃった。という回があった。これこそ小学生たちが最も恐れる事態であろうことを、いわゆる教育番組でやっていたのである。
でも、それは小学生たちにとって、とても大切なことだったと思う。
まだまだ、想像力が足りなくて、欲求のままにいろんなことをするのが小学生。いい意味でも、悪い意味でもその欲求は働くものである。人を信じる力がある子。そのいいことではあるが、その人が信じるにあたいするのか?どうかの見極めはどうだろうか?
そんな子が、襲われてしまうもが「人喰いランドセル」の話。知らないおじさんにランドセルの交換をお願いされて了承してしまう女の子。その女の子は、夜になると人喰いランドセルに食べられてしまう。
この回で花子さんは、女の子を助けなかった。「知らない人についていっちゃいけない。」「知らない人のいうことを聞いたら危ない。」ことを知っていながら、この女の子が、その自体を招いてしまった為に「自業自得だ。」として花子さんは女の子を助けなかったんだ。ということが感じられた。
「助けにこないんだ…。」という話の展開に、口を開けっ放しにあるほどのショックがあった。
大人になった今では、「ダークだわ(笑)。」で笑って済ませるところだろう。しかし、小学生には大事件である。だからこそ、こういった危険が潜んでいること、また、世の中には理不尽なことで、自分自身が危うくなりことを、小学生たちに暗に伝えていたのかもしれない。
その理不尽さが、余計に怖く感じ、また10分程度の話をとても重厚感ある内容に感じさせた一因であろう。この、怖いけどズンとくる内容は、大人の雰囲気も感じられた。
絵柄はほのぼのしているくせに、唐突な突き落としっぷりは、とても新鮮だった。また、オムニバスで、毎日違う話が見られることも見られることも見やすさのひとつでもあっただろう。
今の、昔話しですらすべてハッピーエンドになる世の中では、「花子さんがきた!」のようなダークな教育的アニメを新しく見ることは、難しいかもしれない。でも、幼いうちから、世間の理不尽さや自業自得で起きることの恐ろしさを伝える内容のアニメを見ることも必要ではないか?と私は思う。
本能でそれを察知していたからこそ、当時の小学生たちは、こぞって「花子さんがきた!」を夢中で見ていたのではないだろうか。今の小学生に、このアニメをみせたら、私達と同じ気持になることを信じたい。
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