アニメ版より映画版の方が人気が高い妙なアニメ - 機動戦艦ナデシコの感想

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機動戦艦ナデシコ

4.304.30
映像
4.30
ストーリー
4.30
キャラクター
4.40
声優
4.50
音楽
4.30
感想数
5
観た人
7

アニメ版より映画版の方が人気が高い妙なアニメ

3.03.0
映像
3.0
ストーリー
3.0
キャラクター
2.5
声優
3.0
音楽
3.0

目次

萌え系アニメの元祖ともいわれる『機動戦艦ナデシコ』

アニメ『機動戦艦ナデシコ』の名を知っている人は多いだろう。90年代のSFアニメとしては、わりと有名な作品である。では、一体いつ、どこで初めてその名を知っただろうか?

アニメから見た正統派であろうか。ゲ-ム『スーパーロボット大戦』シリーズからだろうか。それとも看板キャラクターであるホシノ・ルリからだろうか。

いずれにしても、『機動戦艦ナデシコ(以下、ナデシコ)』は本家たるアニメ部分以外でも知名度を挙げた、一風変わった作品である。このため、『ナデシコ』を知っている人同士で『ナデシコ』の話をしようとするとき、思わぬ齟齬を感じることがある。

面白かった、つまらなかった、そういった根本的な話はもとより、アキトの強さがどうだ、ルリの可愛さがどうだといった、側面的なことに話が及ぶことがよくある。それはつまり、『ナデシコ』本編のストーリーや展開よりもキャラクターやロボットに注目している人が多いということであり、『ナデシコ』がそれだけ魅力的なファクターの多いコンテンツだということを表しているのだろう。

実際、『ナデシコ』のストーリーは目を見張るようなものではない。火星についたり、木星トカゲたちと戦ったり戦わなかったり、なんか色々ナデシコクルーが騒いでいたり遊んでいたり、肝心のメインのストーリーがいまいち思いだせないほどである。命のやり取りやイデオロギーの戦いなどは一切ないことからも、他のロボットアニメとは一線を画すといえるだろう。「ゆるい」といわれるのは、おそらくそういったところに由来する(なぜか劇場版は別モノのようにハードな展開になっているのだが…)。

キャラクターアニメのハシリともいえる作品

やはり、『ナデシコ』においてもっとも楽しむべき点はキャラクターたちである。

艦長であるメインヒロイン、ミスマル・ユリカやナビゲーターのホシノ・ルリは、重くなりがちなSF設定に大きな華を添えている。むしろこの華に作品全体が埋もれているほどだ。

主人公のアキトにお似合いなのはやはり幼馴染で「アキトはわたしが好き」のユリカであるが、ルリちゃんの存在は絶対に無視できない。クールで大人びていて、時折見せる子供らしい笑顔や、人間らしい驚いた表情などは、男女問わず人気があるキャラクターだ。

警察庁のポスターにも起用されたことがあることからも、当時の熱狂ぶりが窺い知れるというものだろう。初めて好きになったアニメキャラクターでホシノルリを挙げる男性はいまだに多く、その影響力の強さが垣間見える(余談であるが、劇場版の成長したルリルリはますます可愛らしくなる)。

ヒロインたちだけではなく、他のナデシコクルーも十分に魅力的だ。普通、ロボットアニメの仲間といえば押しつけがましく熱血で、鬱陶しいほど自論を展開するキャラが多いのだが、『ナデシコ』の場合そうではない。

全員が自己中、適当、無関心で、他人に対しては我関せずを貫いている。自分の恋愛ごとになるとさすがに目の色が変わるが、それ以外は同僚であるナデシコクルーに対して近所の人程度の距離感で接するので、良くいえばフランク、悪くいえば適当なのである。

真面目なSFアニメとなれば非難も殺到するかもしれないが、『ナデシコ』はゆる系SFコメディなので、誰も気にせず終わっていく。もしかしたらそれが劇場版への伏線になったのかもしれない…。

軽いノリは制作側の悪ふざけだったのか

一方、軽すぎる展開は批判をも生んだ。主要登場人物が死んでなお(しかもパイロットキャラのダイゴウジ・ガイである)、キャラたちは悲しみに浸る表情も見せず、いつものゆるーいお祭り騒ぎを続けている。悲しんでいるのは主人公のアキトひとりという有様で、これは真面目な視聴者から反感を買ったに違いない。

他にも、『ナデシコ』はストーリーに厚みがないというのは前項でも述べたが、26話通して抑揚・起伏が少なく、これといった記憶に残るエピソードがなかったのも痛い。

やはり『ナデシコ』は良くも悪くも”キャラアニメ”であり、各キャラクターの気持ち(特に女性キャラの恋愛話)に重きが置かれることがほとんどで、ロボットアニメらしい盛り上がりを見せる展開はほぼなかったといっていい。

ただし、要所要所で活躍するエステバリスやナデシコは造型ともかなり力が入っていて、話の主軸にこそならなかったものの、作り方次第では十分に物語のメインを張れる実力を持っていたように思える。キャラ人気の陰に消えてしまった感は否めないが、『ナデシコ』はSF的設定もしっかり整えられており、そこをもう少しかみ砕いて説明するぐらいの心意気を見せた方がファンの開拓に繋がったのではないだろうか。

ゆるい展開とキャラアニメを全面に推した経緯もあってか(一説によると制作側がアニメ版で反省したらしい)、劇場版はかなりヘビーな展開が続いている。本考察はアニメ版『機動戦艦ナデシコ』を取り上げているため劇場版の内容については詳しく触れないが、作画もストーリーもだいぶ変わっていることだけは触れておこう。

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