パイレーツ・オブ・カリビアンと世界史
カリブの海賊とトルトゥーガ
カリブの海賊は17世紀から18世紀にかけてカリブ海沿岸地域で活動していた海賊です。平等主義を実践していたようで、黒人・白人・混血に関わらず仲間に入れていたようです。この映画ではバルボッサとジャック・スパロウが率いる海賊の2つしか出てきませんが、両海賊ともいろいろな人種が入り乱れて構成されていることがみられます。海賊に入るための条件というのは特にはなかったようですが、掟が意外と厳しく船の上でいざこざは起こさない、女は乗せない、女・子どもの捕虜には乱暴をしないなど、細かいことまで上げるとたくさんあるようです。この時代商船や軍艦の乗組員の方が、重労働であったり、満足な食事を与えられないなどひどい労働条件で働いていて、そこから逃げ出した者たちが海賊になっているので、平等でいるための掟がたくさんあり、従わなかったものに対しては罰を与えていました。そのほか船に女を載せると不吉なことが起こるという迷信を信じており、女で海賊になりたいものは男装をして女であることを隠して仲間になったようです。この迷信は船の名前には女性の名前がつけられることが多く、女性が船に乗ると船が嫉妬し転覆してしまうといわれていることからのようです。
海賊の島として紹介されたトルトゥーガ島は実在する島で、実際海賊の島として繁栄していた島のようです。かつてはメキシコからカリブ海を出て、スペインに向かう輸送船がこの島の近くにあるウィンドワード海峡を通っていたため、海賊船が襲って財宝・物資を得る本拠地としてはとても都合のよい島だったようです。海賊のたまり場になっていたため、治安は決していいわけではありませんでしたが、お金を浪費する海賊たちのおかげで歓楽街が発達していました。何度かスペイン軍が海賊たちを捕らえようと、島に軍を送ったようですが、そのときはすぐに追い返されています。仲間を裏切ったり見捨てたりすることは掟で禁止されていて、それゆえ団結力が強い海賊たちのため、敵味方関係なく軍に抵抗したとも考えられます。
アステカの呪われた金貨
アステカの呪われた金貨を略奪したキャプテンバルボッサ率いる海賊が、882枚の金貨を集めその金貨を石棺の中から奪ったものの血をささげて呪いをとくため、金貨と最後の持ち主ブーツストラップビルの血族を探すといった内容がこの物語の概要です。アステカは実際にあった国家で、エルナン・コルテスが征服し圧政をしていたようです。実際にはアステカ軍はコルテスの進軍をとめるために、大量の金銀財宝を贈りましたが、欲深いコルテスの軍は国中から金銀財宝を集めるよう命令しました。そのことが原因でアステカ人から反感を買い、反乱の恐れを抱いたコルテスはアステカに軍を送り、滅ぼしてしまいました。
「アステカの神の呪い」というセリフがありましたがアステカ神話というものものこっています。アステカの神にはウィツィロポチトリ(太陽神・軍神・狩猟神)やシベ・トテック(穀物の神)がいます。どちらも生贄をささげる儀式を行います。敵国の捕虜を使って生贄の儀式をすることも多く、その生贄の儀式は残酷性が非常に強かったため、敵国の兵士は捕虜になったら体が引き裂かれると思い恐れおののいていたようです。
海賊の乗組員
海賊の乗組員は、船長・航海長・大工・甲板長・砲手で構成されているようです。そのほかには次席・舵手・水夫長・下級航海士・外科医・料理長・弾薬運び・キャビンボーイ・楽士・平船員などがいる船もあったようです。キャプテンバルボッサは以前ジャック・スパロウが船長だったブラックパール号の一等航海士でした。一等航海士の仕事は現場監督的な働きのようで、船長不在の時には船長の代理として仕事をする人のようです。ジャック・スパロウを島に置き去りにした後、ブラックパール号の船長としてみんなをまとめることができたのは、もともと乗組員をまとめる立場だったので自然と船長としての働きができたのでしょう。
ジャック・スパロウがキャプテンバルボッサにされた「孤島置き去りの刑」ですが、本来であれば「仲間内で金品を窃盗・横領したもの」「脱走を企てたり、仲間に秘密を持ったりしたもの」「賭け事をしたもの」の罰として実施される刑だったようですが、ジャック・スパロウはただ単にバルボッサと乗組員に裏切られたというだけのことでしょう。ジャック・スパロウは弾が1つだけ入った銃を渡されて、孤島に取り残されました。実際の海賊の刑も与えられたのは弾薬1瓶、水1瓶、小火器1丁および弾丸で、これを考えるとバルボッサがジャック・スパロウに与えたものは非常に少なかったといえるでしょう。バルボッサはジャック・スパロウに生きて戻ってほしくない気持ちが強く、生命を最低限維持できるものではなく、自殺できる道具を与えたと考えると、渡したものが必要以上に少なかったのも納得できるところでしょう。
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