うたた寝に恐怖あり
なかなか変わった題名であり、これだけだと意味がわかりにくい。しかし映画を観た後にこの意味を調べてみると納得できるような邦画名である。『ある時代のものの見方・考え方を支配する認識の枠組み』。いかにも大学教授で登場するビクターウォンが講義で学生達に言っていたような言葉であるが、原題『はPrince of Darkness』。つまりファーザーそのものが題名でした。
昔は大学生ってこんな大人っぽくて・・って思っていたが、今見るとかなりの年上な俳優さん達が、それぞれの分野から集められある古びた教会の地下に発見された謎の物体の正体を探るという映画。
神父役にはドナルド・プレザンス。『ハロウィン』ではブギーマンを追うお医者さんでしたが、こちらでは大人しいというかこれといって最後まで活躍のない神父さんである。
あと、私のお気に入りの俳優としては先ほどあげたビクター・ウォンである。この人はアメリカの片田舎であろうと、チャイナタウンであろうと、大学であろうと、存在自体が自然体だったり不自然だったりと完璧にこなしてくれる。
今回では教会からの胡散臭い依頼をさらにこの教授が受けるという、胡散臭さの倍増であるがそれを納得できるように進めていくのが、いかにもジョン・カーペンター作品なのである。
まずは静かに一人ずつ、の手腕は『遊星からの物体X』に似ているかもしれない。
得体のしれない液体を口の中に噴射される女優さんの咳き込みは観ているこっちも苦しくなる。教会の外に出てきた生徒は悪い信者(?)達によって刺殺されたり、有名な歌手の方に自転車で刺殺されたりするのである(苦笑)
じわじわと周りを人とは別のものが固めていく。不安になる生徒たち。
この映画の一番の恐怖は生徒達がふとうたた寝したときに始める不鮮明な映像だ。はじめはちょっとずつ始まり、映画が進みうたた寝をする人が増えるごとに、観客も少しずつ映像を観ることができる。
しかしその映像も不鮮明だし、音も悪いし、なによりカメラが揺れまくっていて何が何だかわからない。でも不安が残る。なにがはじまる?
一斉に襲い掛かってくる恐怖達。鏡から蘇ろうとさせるもの。
それを理性とかそういうものをかなぐり捨てて鏡の中に飛び込む彼女、そして割られた時の彼女の絶望感。
最後に主人公が観た映像は彼の単なる夢だったのか?しかし彼はあの教会では寝てはいないのであそこまではっきりと映像化できないともいえる。ならば、もしほんとに未来は変わっていて彼女が悪の元になっていた場合、彼女の過去を調べた未来の人が
彼にも新しい映像を送ったのかもしれない・・・などと、想像はつきない。
ジョン・カーペンターの映画はそういう感じだ。ラストは余韻ももたせ、あとは観客が考えるといい。そんな楽しみを残しておいてくれる。だからこそ、何回観ても、誰と観てもラストについての会話が楽しめるのである。
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