甘酸っぱいだけじゃない青春
紡木先生の作品はどれも大好きですが、No.1を選べと言われたら間違いなくこの作品です。
教室やグラウンド、校舎や町の風景、どれも丁寧に繊細で細かく描かれていて、ふわっと優しい気持ちにさせてくれます。
恋、部活、親への反抗。子供から大人になって行く青春が美しい‼
付き合っていても、自分に自信がなくて好きだと上手く伝えられないかよちゃん。 男のプライドなのか、悩みなどを話さない紺野くん。
別れたり、すれ違ったりしながらゆっくり近付いていく二人の距離。
実際も付き合い始めた時は言いたい事が言えないものですよね。喧嘩して、仲直りを繰り返してだんだんとお互いを理解していくものだと思います。
その行程がしっかり描かれているからこそ、ストーリーが自然に入ってくる。
物語に入り込み、かよちゃんのお父さんにはイライラさせられました。「この頑固親父‼」って何度も思いました。
心配なのはわかる。わかるけど許せないのが思春期なんだよ。 …でも、私的にこのお父さんはただの寂しがりな気がする。
そんな頑固親父を振り切って上京したのに、お母さんの病気ですぐに田舎に戻ることに。紺野くんの「愛してる」を信じていたのに連絡が途切れる。
紺野くんは、かよちゃんが応援してくれていたサッカーを止めてしまい、仕事も順調ではない。そんな自分に自信が持てず、かよちゃんに別れを告げよたように感じます。
そして、かよちゃんの別れの手紙。涙なくては読めません。
『わたしの心はずっとあなただけのものです』
もうね、この言葉には胸をぎゅっと掴まれました。
青春時代の本気の恋って、一生ものだと思うんです。もし、恋が終わってしまってもずっと心に残っている。
『ずっと俺のそばにいろよ』
命令口調だけど、ほとんどお願いですね。負けたくない一心で仕事を止めず、1度は別れようと決意したのに、やっぱりかよちゃんが好きで手放せなかった。
紺野くんは、家の仕事をしながら、サッカーのコーチを始め、隣ではかよちゃんが笑ってる。
ラストもすごくしっくり来ました。
これからも二人は笑いあい、支えあいながら幸せに暮らしていくんだと思います。
何度読んでも、青春の爽やかさと幸せの余韻が続く。出会えて心から良かったと思える作品です。
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