地球を救おうとする地球外生命体
二人の対照的なリーダー
ヴァージル・ブリッグマン(通称バッド)は、海底油田を発掘するチームの個性的なメンバーをまとめる責任者です。ある日会社から沈没した原子力潜水艦を発見するために、軍と協力して捜索活動を行うようにと依頼がくる。危険な作業となるため通常の3倍の給料を払うといわれ喜ぶメンバーだが、バッドは原子力潜水艦の沈没ということで、メンバーに危険が及びそうなとき・放射能が漏れていた場合は撤収することを条件に作業にあたることを承諾した。
チームの命の安全に責任があるため、危険な作業はさせないというバッドはチームに対してとても責任感があるリーダーです。その上メンバーをまとめる能力も優れています。この任務の指揮をとるのは軍の特殊部隊から派遣されたハイラム・コフィ大尉ですが、命令ばかりしてバッドのチームに反感をかっています。この対照的なリーダーも見どころで、自分の命令には絶対だというコフィ大尉と、頭ごなしに命令するのではなくチームとしてみんなに働いてもらえるよう指示をすることが大事だというバッド、同じ作業を指示してもコフィ大尉の命令には反発するが、バッドの指示にはみんなが素直に従います。上に立てば立つほど相手のことを尊重しないと、人はついては来ないというのがよくわかります。
地球を救うのは人間次第
核弾頭が落下した海溝の底には宇宙船がありました。正気を失ったコフィ大尉が核弾頭を爆破させようと海溝に核弾頭を落したため、バッドは無力化するために6000メートルも海底に潜っていくことになり、液体酸素が尽きる寸前で地球外生命体に助けられます。そこではじめてリンジー・ブリックマンがみたといっていたものが本当だとわかります。地球外生命体は攻撃することなく、バッドに今地上で起こっていること戦争や災害のニュースを水の壁をスクリーンとして映し出しました。海溝にいた地球外生命体は水を操る能力があったようです。海底からずっと人間のこと見てきた地球外生命体は、延々と繰り返す人間同士の争いや環境の破壊行為に対し、人間を絶滅させることが地球のためになると考えたようです。海に嵐を起こし、津波を起こして人間を裁こうとしていました。しかし、自分を犠牲にしても核弾頭を無力化させるために海溝におりてきたバッドに、人間への希望を見出したようで津波をおこすことをやめます。
人間が地球環境を破壊していることに警鐘を鳴らしている映画です。何度でも繰り返す戦争や殺戮行為は、科学が進歩した現在では地球規模での破壊行為に発展するような武器が開発されています。核爆弾もそのひとつで、爆発させればそこに住む人間だけでなく地球規模の環境に大打撃を与えてしまいます。ひとつの国が新しい武器を開発したら、その国と敵対している国が同じような武器を開発し持つことで、使用するのに抑止力となるという考えがありますが、力には力をという考え方自体を改めないといけないかもしれませんね。地球外生命体からのメッセージは、人間はもっと大人になれということでした。おせっかいだと映画の中では笑っていましたが、本当にその通りだとおもいました。
ジェームス・キャメロン監督の意とする「アビス」
この映画は「アバター」「タイタニック」の作品を手がけたジェームス・キャメロン監督で、完全版とは別に劇場公開用にシーンをカットした劇場版があります。完全版が171分なのに対し劇場公開版は140分と30分短くなっています。。海底で地球外生命体と遭遇するパニック映画として分類されますが、地球外生命体とのファーストコンタクトを描いた「未知との遭遇の海底版」ともいわれています。劇場公開版ではこの映画の核ともいえる地球外生命体がバッドを助けてから海上に浮上するまでのシーンが大幅にカットされており、内容としては全く別の作品になっているようです。両方見た人たちの評価も両極あり、どこに重点を置いてみるかによって全く評価が違うようです。
私個人の感想としては「とにかく長い」の一言です。前半は海底パニック映画のような様相をしていますが、ラストがどこに向かっているのかがわかりにくく、前置きがすごく長いというイメージでした。最後の地球外生命体が人間に警鐘を鳴らしたシーンで、やっとこの映画の意図するところが見えた気がしました。実際171分は長いのですが、ジェームス・キャメロン監督がこの映画で伝えたかったところが「人間はもっと大人になれ」というメッセージにこめられていたのであれば、劇場版ではカットされていた「人間に絶望した地球外生命体が、津波を起こすことで地球を守るために人類を滅亡させようとしたが、バッドの自己犠牲の精神に希望を見出して人類を滅亡させることを中止した」という一連の流れが伝わらなくなってしまうので、監督自身が見てほしいと思っているのは、完全版の方ではないだろうかと思いました。
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