引き時を間違えた長期連載漫画 - BLEACHの感想

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BLEACH

4.294.29
画力
4.00
ストーリー
4.42
キャラクター
4.08
設定
4.33
演出
4.17
感想数
7
読んだ人
29

引き時を間違えた長期連載漫画

3.03.0
画力
3.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
3.5
演出
2.5

目次

ジャンプを長年支える人気作。だが…

『BLEACH』は2001年より週刊少年ジャンプにて連載している漫画だ。分類としてはバトル漫画となり、主人公・黒崎一護とその仲間たちの戦いが描かれる。一護が戦う相手は、死神、滅却師、虚、とエピソードによって変わっていく。

その連載は15年に及び、コミックスはゆうに70巻を超える。『BLEACH』の他にも、同時期に連載している人気作『ONE PIECE』は80巻、『NARUTO』は72巻と、昨今のジャンプではバトル漫画の長寿化が多く見られる。同じくジャンプの名作として知られる『ドラゴンボール』が42巻で完結、『SLAM DUNK』が31巻で終わったことを考えると、いずれも破格の数字だ。

長期連載に伴い、『BLEACH』の発行部数は8200万部を突破。アニメ化、舞台化、海外展開と、順調なまでに広がりを見せた作品である。

だが、だからといって支持されている漫画とは限らない。むしろ『BLEACH』は、連載すればするほど人気が下がり、ファンの読む気が失せている、というのが正直なところだ。

ネット上の評価も辛らつなものが並び、海外ファンですら「長く続きすぎだ」と酷評している。それも考えれば当たり前の話で、連載15年ということは赤ん坊が中高生になるのと同じ時間が流れているのだ。ファン層も変わり、大人になったかつてのファンは『BLEACH』の魅力を忘れて、むしろ「まだやっていたのアレ?」と鼻白んでしまう。

長期連載は必ずしも名作の証とはならないということを、奇しくも証明してしまったのが『BLEACH』なのである。

初期と中期、後期は別モノ

とはいえ、人気作になるためには一定の基盤が必要だ。

『BLEACH』連載初期、一護がルキア救出まで尸魂界に乗り込むところは少年漫画らしい熱さを帯び、読者は夢中になって物語を追っていた。展開もさることながら、一護たちの障害となる敵・死神はいずれも個性豊かで、かっこよくみえたことも人気の一因になった。この当時はアニメも最盛期で、二次創作界隈でも女性人気が集まり、『BLEACH』は旬ジャンルにまでなったこともあった(同人人気が過熱するいわゆる旬ジャンルになると、グッズやコミックスの売り上げが一気に増える)。

だが、尸魂界が終わった頃から、『BLEACH』は読者たちに次第に飽きられるようになる。そもそも尸魂界編が長かった(コミックスで12巻分は少々長い)こともあり、途中でついていけない人が続出した。

普通、こういった長期シリーズが終わると、その節目に連載終了といった区切りが意識されるが、『BLEACH』の連載は終わる気配が見えなかった。尸魂界編が終わったあとも、破面編が終わり、死神代行消失篇、千年血戦篇…と続き、今に至るという訳である。

長期の連載に伴って、作者の画風も物語のテンポも大きく変わった。

初期の頃、確かに面白かったはずの『BLEACH』の魅力を読者は見失い、結果として読むのをやめてしまった。一度離れた読者はなかなか戻らない。それが、ネット上やジャンプを読んでいる購読層からも酷評されているのを聞けば、なおさらだ。

空白の目立つ書き込みの少ないコマ、大胆というにも大きすぎるコマ割りは時に某絶望系漫画でもネタとして取り上げられ、作中の詩やネーミングセンスもネタとしてしか扱われなくなり、『BLEACH』はむしろバトル漫画というよりネタ漫画として話題に上るようになった。

ジャンプには時折ネタ漫画として人気が出る作品も登場するが、その人気の集まり方は漫画と作者の本来の意図とは違う(むしろ真逆の)ものである。

『BLEACH』作者はこの現状(窮状といってもいい)を察してか、たびたび批判に対してSNSで苦言を呈することがあった。作者の言い分は確かにわかるが、今いちど自分の作品を振り返ってみてはどうだろうか。

ただ惰性で続けている訳ではないと証明したいのなら、ふやけて伸びきった麺のような連載を一度打ち切り、再起をかけた方がよほど漫画家として評価されると思うのだが…。

最良のエンディングはあるのか

以上のように苦言を呈してきた『BLEACH』であるが、売れている作品であることには間違いない。また、現在はストーリーが最終章に入っているという見方もあり、今後の展開によっては大団円、グランドフィナーレを迎える可能性もある。

打ち切りではなく、作者が意図した形でエンディングを迎えられるということは、ジャンプにおいては稀有なことだ。多くの作品が不本意な形で打ち切られるなか、ここまで作者の希望どおりに進んでいくということは滅多にあることではない。

長期連載のぶん、広がった風呂敷は多いはずだ。だが、久保帯人がそれをキレイにまとめ、去っていったファンも、現在読んでいる読者にも納得が出来る『BLEACH』らしいエンディングを用意していることを期待したい。

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