素顔の三谷幸喜に出会える
三谷幸喜の笑いのツボを発見
2000年から朝日新聞に掲載されているエッセイ、自分自身の身の回りに起こった出来事について、赤裸々に語っています。三谷幸喜といえば、喜劇や映画などで幅広く活躍しており、日本の中で喜劇を描いたのならピカイチ、さらに脚本家&俳優&映画監督&劇作家と多様な顔を持つ人物。
三谷幸喜ファンでなくても、クスッと笑える一冊です。
そんな、彼の笑いのツボがこの本を通じて感じ取れます。人とは少し違った見方をし、そこから笑いを見つけだす能力が彼にはあるようです。特に「木にぶつかり大出血」では、緊急事態にあるにも関わらず、その内容はコメディそのもの、救急隊員の「~うんちを拾おうとして」や「出血をしててれ臭い」と表現して、緊急事態にも笑いの精神を忘れない彼の強かさを発見できます。また、「情熱は象にも通じる」では、なんでも『あれ』で済ます、情熱家の森さんを紹介しています。
三谷幸喜から見た笑いのツボは、笑いは悲劇からと生まれ、人間らしさから滲みでてくるものだと、言っているのです。
ただし、読んでいても、これが面白いのかな?というエッセイもあり、独自の世界観を持っている三谷幸喜ならではいえる部分もあります。
東日本大震災でも公演していた
このエッセイを書いていたのは、2010年4月30日~2011年5月26日までです。
その間起きた、東日本大震災の事にも触れ、地震があったにも関わらず、何日かの公演は行われていたようです。しかし、あの時は交通も乱れ、原発の恐怖も未知数でした。今、考えると開演したのは、果たして正解だったのかと疑問に感じます。劇場も、半分以下の客の入りだったとか…。三谷幸喜さんの都合で開演したわけではないでしょうが、あの頃は、交通網がマヒし余震が酷くて、皆怯えていた時期です。劇場に足を運びたくても、行けなかった人がほとんどなのに、幕を開けるのは、ちょっとチケットを購入した人達にとっては可哀そうだと思いました。舞台を中止にすれば、払い戻しはあるけれど、開演すれば払い戻しはしなくてすみ、買った人のみが損することになるのです。ちょっと、そこの所をわかって頂けたらと思いました。
動物に対しての愛情だが…
三谷幸喜さんの自宅では、猫を飼っています。そして、新しい子猫であるペーがきますが、なんと、三谷幸喜さんは猫アレルギーにとなり、ぜんそくを引き起こしてしまいます。大人の喘息は命にも関わる場合や、重症になるケースもあり、三谷幸喜さん自身も、夜寝られないほど苦しんだそうです。普通は、苦しめられた猫、自分を病気に追い込んだ猫なのに、三谷幸喜さんはさらに、猫を憎むどころか、構いたくて仕方ないようです。きっと、また、近いうちにぜんそくを起こすかもしれませんね。
俳優は本業ではない?
「三谷幸喜のありふれた生活」を読むと、彼の本業が俳優ではない事がわかります。映画や舞台に対しての意気込みは、独自のこだわりやポリシーが感じられますが、俳優業には感じられません。サザエさんの「巨大な伊佐坂先生に」では、かなりのメークを施し、他の共演者とはまるで別世界の巨人となったようですが、俳優としての心意気があまり感じませんでした。ただし、彼の持前のいるだけで、なんだか可笑しい気分を作り上げてしまう雰囲気は、生まれ持った俳優らしさなのでしょう。
ステキな金縛りで深津さんと良い相性
この本は、何気ない日常の話なのですが、時々有名な俳優や、女優の裏話を聞く事ができます。テレビとはまた違った角度から見える女優さんや俳優さんのお話は、身近な人に感じさせてくれます。「深津さんとは奇縁良縁」では、彼女との良き出会いと、自分との相性の良さを語ってくれています。三谷さんから見た深津さんは知性の人、さらに自分が思ったような演技をズバリしてくれるようです。
監督とは、やはり偉い立場の人間なんだなと改めて思いました。作品を作り上げる時には、役者の演技が全てだと思っていましたが、監督からみると、人間をどう動かすか、語らせ表現させるか、という立場から見ている事に思い知らされます。
素敵だなと思う俳優さん達は、監督に動かされているみたいです。
三谷幸喜の離婚
ここでちょっと驚いたのが、三谷幸喜自身が、自分の離婚問題を記した事です。ほとんどの方が、自分の離婚話はしたがらないでしょうし、避けて通りたいところですが、三谷幸喜さんは受けて立っていました。さらに、本の最後には、大竹しのぶらとの対談が入っています。離婚歴のある大竹しのぶらとの会話が記されているのですが、離婚というタブーな問題を、ザックバランに話し合います。離婚後も会うとか、会っても平気だとかの言葉には驚きましたが(だったらなぜ別れたのだろうと)それぞれの価値観と、離婚に対するスタンスの違いを知ることができます。
現在は、三谷幸喜さんには19才も年下の若い奥さんと、お子さんがいますので、それを踏まえてこの発言をみると、また違った面白さです。少し意地悪ですが、人見知りで結婚には向かないといったのが、嘘と言う事になるのでしょうね。
一年に一冊を出版している
この本は、一年に一回出しているので、その年の社会環境や、三谷幸喜さんの仕事によって違ったエッセイが楽しめます。四季折々を楽しむように、毎年違った三谷幸喜の周辺が感じられる本と言えますね。彼の日記と成長期と言ったところでしょうか?
しかし、エッセイにしてはたくさんのサービス精神が詰まっており、台詞や文章も硬くなく非常に読みやすいです。いい流れのある文章なので、心地よく読め、クスッと笑える一冊には間違いないようです。
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