猫たちの視点の物語
「絵のついた本を読むなんて!」
これは、この本を母に紹介したときに言われた言葉である。
絵が付いていて何が悪いのか、当時の私にはさっぱり分からなかった。今もだけど。
むしろ母が読んできたハーレクインのラブロマンス系の小説は嫌いだった。明らかに理想しか書いていなかったから。
話を戻そう。むしろこの本に絵は必要だ。色は少なめだけど文章を読む補助となってくれる。視覚過敏の方にも優しいだろう。当時は全く自覚がなかったが、視覚過敏かつADHD傾向のある私には読みやすかったのかもしれない。
主役の猫が試行錯誤しながら、カモメを育てていくところは興味深いし、彼は分からないことは仲間に相談している。
隠すことの方が遥かにつらい。それは南雲明彦さんが出演した「世界仰天ニュース」を観れば一目瞭然である。後に彼はディスレクシア(学習障害)と分かるが、彼自身の困難を隠すことが、かえって心身の負担となっていたのである。
最後にカモメを海に帰すにあたり、人間の中で唯一力を借りた詩人の姿も絵に無いのも良かった。あくまで猫たちの視点の物語であることを認識してもらうためでもあるだろう。
そして一番のポイントは、この一連の出来事は主人公の猫の飼い主が家にいない期間にあったということだ。
飼い主が不在のときの話だからこそ、猫たちはもしかしたら私たち人間をよく観察しているのだろうと思わせる。実際そうなのかもしれない。たとえ人間たちが自分たちの都合のいいように「頭の良くない」遺伝子を残すために猫たちを品種改良してきたとしても!
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