泳ぐのに、安全でも適切でもありませんの感想一覧
江國 香織による小説「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
少しバブリーな香りのする、短編小説集
第15回山本周五郎賞受賞作品なのだそうです。10話からなる短編小説集です。女性達が、安全でも適切でも無い世間で、人生を泳いでいく話なのかな、と思いました。なんとなく、バブルな感じがするのは気のせいか?登場人物達に、生活感がないです。文章は読みやすいので、サラサラと読めるけれど、登場人物に共感はできませんでした。なので、今ひとつ面白くなかった…というのが本音です。「うんとお腹をすかせてきてね」の主人公が、たくさんの食べ物を美味しそうに食べるのは、良かったけれど、実際、そんなに食べたら、体型が変わらないかな…と心配になりました。羨ましい、の一言です。
不思議な一冊
何度でも読める一冊です。短編集なので、好きな作品と、好きではないもの、「えっ!?」というもの、まあまあかなというもの、色々な物語があると思いますが、読む度に感想が入れ代わりそうな、そんな一冊だと思います。読み始めると、非現実的な世界に引っ張っていってくれて、読み終わると、不思議なくらい跡形もなく消えていく、そんな一冊です。何度でも読ませてくれる、江國さんの文章力が素晴らしいです。やっぱり読書って、最高の現実逃避なので、お供がこんな一冊だと最高だと思います。題名が素敵だなぁと手に取り、読んでまた素敵だなぁと思い、何度も読みたくなる一冊です。お勧めです。
脱・ひらひらの江國香織。
10の短編が収録されています。この作品集で山本周五郎賞を受賞していますが、受賞のうなずける、緊張感のある一冊です。特に表題作「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」「うしなう」が印象に残りました。「うしなう」の主婦たちは怖ろしいものです…。もともと江國香織は関係性を“外堀から埋める”タイプで、明言をせずに親密な関係性をー家族や恋人ーを描いてみせる作家ですが、この作品集以降、とくに「家族」「夫婦」の関係性のいっそう多様なあぷりだしにチャレンジしていると思います。主人公が自らに陶酔している、ヘンに世界を美しく見てしまっている、そういう世界観から脱却した、どちらかといえばドライで、必要以上のことを言わない、そういう文体へと変化を見せている、「ひらひら」からの脱却の一冊です。
江國ワールドの大人な恋愛短編集
表題作の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を含む10編の短編集。第15回山本周五郎賞受賞作品です。学生の頃なら「こんな人達、本当にいるんかねぇ?」と思っていただろが、色々経験してこんな年齢にもなると実際に身近にあっても(少々イヤな場合もあるが)おかしくない愛のカタチだなと思う。江國さんの愛は時として痛い。本人達は十分に幸せなのに、第三者として覗き込んだその世界は何かを力一杯ギュッと掴まれる様な息苦しさを感じてしまうのは何故だろう?好きで好きで嫉妬し始めるときりがなくて、どこか自分で止めたくても止められなくなってしまう。だから妻を引き離す為に犬小屋で寝る男。しかもその犬小屋を自分でしっかり作るって言う所が、余計信用ならない男だなぁ。(笑)他人からはけっして見えないところに潜んでいる男女の形がとてもリアルでドキドキします。