世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの感想一覧
村上 春樹による小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
すべてが架空で詩的でリアルな長編小説
なぜか読むのが遅れた作品私が初めて読んだ村上作品は「1973年のピンボール」だ。確か中学生の頃だった。そこから「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」など食い入るように読んだのだけど、なぜかこの「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」だけが抜けていた。手に取ったのは働き始めてからくらいだったと思う。なぜ読んでいなかったのかわからないけど、逆にまだ読んだことのない村上作品があったことがうれしかったことを覚えている。もちろんそのまますぐ買って、家の本棚に並べられることになった。もともと気に入った本は何度も読み返すタイプなので、ボロボロになってしまい買いなおした村上作品は少なくない。前記したタイトルしかり、「ノルウェイの森」しかり「パン屋再襲撃」しかりだ。そしてこの本も2度ほど買いなおしている。読むのは遅れたものの、気に入っている村上作品のひとつだ。同時に進行する2つの物語この...この感想を読む
「太った娘」について 本作では不発だが、後の有名ヒロインへのステップ?
迷走するヒロイン像過去、村上春樹作品のヒロインについて何度か考察してきた。私の勝手な位置づけだが、村上作品最高のヒロインは1987年執筆の「ノルウェイの森」の直子と緑、翌88年「ダンス・ダンス・ダンス」のユミヨシさんの3人だ。この3人は作品の必然性とキャラクター性、描かれる場面が全てマッチしており、読者にどのように映るか、という点でも計算されつくしており、村上春樹の巧みさが存分に発揮された、と言える。※本サイトの「羊をめぐる冒険」の耳が美しい女性(キキ)での失敗、「ダンス・ダンス・ダンス」のユミヨシさんの成功例などを記述しているので、是非検索して読んでいただきたい。さて、本作品には世界の終わりサイドで 「影が無い女の子」、ハードボイルドワンダーランドサイドで「太った娘」と「図書館のリファレンスの女の子」が登場する。「リファレンスの女の子」は個性が薄い点で直子、緑、ユミヨシさんにやや劣る...この感想を読む
まどろっこしい
まず、とにかくまどろっこしい。村上春樹の説明はいつも長ったらしくて、よくわからない比喩を使う。比喩っていうのは伝えるためのものなのに、オシャレ度にこだわって、伝わりにくい比喩を使うのはいかがなものかと思う。たとえば、「乗ったエレベーターが、ステンレスでボタンがなく、広い。自分が普段使うエレベーターと同じものとは思えない。暇だし、ポケットの小銭でも数えようかな。」ということを説明するのに数ページかける。しかも、主人公は美人でふとっている女の人を見ると、その人とのセックスを想像する。変態だ。こういう人のことを変態というんだな、と思う。ストーリーは面白い。
大胆な滑稽話
新装版ということで装丁の絵や挿絵も中々効いていて興味を引かれます。内容はさすが村上春樹という感じで、いわゆる春樹節が炸裂しまくりの内容です。とりあえず、現在言われている最近の村上春樹の作風を知るにはちょうどいい作品だと思います。内容はいわゆる滑稽話の部類です。村上春樹らしい独特の文章のリズムと匂いが薫るような描写。やはり他の作家とは違うなと感じさせてくれます。長編の上巻ということで話の深層に触れそうなところで終わります。まぁ、当然ですが。始めはライトノベルのような軽妙な話が続くのかと思って読み進めると、中々哲学的な様相を含んできます。さぁ、いったいどうなんだ、太った女がちょっと可愛く思えてきたところで終わります。自然と下巻が読みたくなる、そんな作品です。