乙女の密告の評価
乙女の密告の感想
乙女を通じ、リンクしていくアンネの心
くどいくらい『乙女』ということがが出てくる、芥川賞受賞作品です。癖のある主人公と、さらに癖のある漫画の登場人物のような周辺人物。そんな、ふざけた空間の中に、アンネフランクの生涯がかぶさっていきます。設定だけ書き出すと、無理があるように思えるのだけど、そんな空間の中にじわりじわりとアンネの世界がリンク、交じり合っていくさまが、特異で逸脱なのです。後半のスピード感とひやりとする恐怖が、読者に、一見さほど関係のなさそうな空間の中、アンネを強く『感じさせる』ことに成功しています。発表された時の評価は人それぞれでしたが、私は、類をみない方法でアンネフランクにアプローチした、大変意義のある小説だと思っています。