兎の眼の評価
兎の眼についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が4件掲載中です。
各項目の評価分布
兎の眼の感想
やり残してきた仕事がある大人の心を揺さぶる一冊
傷を負っていない人間も、強くやさしくなれるのか「兎の眼」という一風変わったタイトルだけは、ずっと以前から知っていたのですが、ストーリーについては一切知らなかったので、先入観を持たずに読むことができました。1974年に発表された社会派小説である本作の主な舞台は、小学校と、そこへ通学する幾人かの子どもたちが暮らす塵芥処理所です。今でこそ、多くの塵芥処理所は、窓の少ない大きな高層の建物の中でゴミの処理を受け持ってくれていますが、この物語が書かれた当時は、様々な事情を負いながら、仕事場のすぐ近くに住居が持てますよと役所から言われた人々が、夏も冬も灰を浴び続ける生活の中で、処理を受け持ってくれていた様子がよくわかります。作者の灰谷健次郎さんは、17年の小学校の教師の経歴を持ちます。これほどの小説を書く灰谷さんがどうして教師を辞めたのか。今の時代に作家について書籍で調べたり、インターネットで検索をするこ...この感想を読む