戦争という狂気の中で懸命に生きた人々
『戦後は終わった』という有名な言葉がある一方で、今でも、戦争中の恐怖や自責の念にとらわれている人がいるという話を聞きます。私は、実際に太平洋戦争を経験したわけではありませんが、この映画を観ると、戦争の終わりというのは、平和条約が結ばれたり、復興が進んだりといったことで画一的に決めることができるものではなく、その人が重荷を下ろせたと感じられた時に初めて訪れるのだと感じました。 この映画は、敗戦が濃厚となった終戦直前に、マッカーサーから奪ったという莫大な金塊をひそかに隠す任務を与えられた生粋の軍人将校、財務省から出向していた青年将校、手伝いを命じられた下士官、そして、何も知らされぬまま動員された少女たちとその担任教師の物語です。上層部は少女たちを殺すよう命じますが、将校は最後までそれに反対します。しかし、少女たちは極秘任務であることを感じ取り、将校が隠していた毒薬をつかって自ら命を絶ってしまうのです。生き残ったのは、1人他のこと離れて別の仕事をしていた級長の少女……彼女を殺そうとする上層部から体を張って守る下士官。2人はやがて結ばれて夫婦となります。互いに支え合って秘密を守っていくのです。そして、若い将校は少女たちを弔うようにひっそりと暮らし、財務省へ戻った青年は少女たちのためにより良い国を作ろうと、命を張って自分の意見をGHQに通すのです。そして、死してのちも整然と並んで宝を守っているたくさんの少女たちの遺体。 誰もが戦争という狂気に翻弄されながら、必死に大切なものを守ろうとしている姿に、涙があふれて止まりませんでした。もう二度とあんな悲劇が起きないように……いや、起こさないようにしなくてはいけないと実感させれます。 終戦記念日など、戦争のことを考える機会の1つとして、ぜひ観ていただきたい映画です。
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