ミステリーとホラーの線引きの難しさ
綾辻行人の『館シリーズ』7作目。 リアルタイムで追いかけていたファンにとっては「ようやく」「念願の」「満を持して」出た作品だ。 作品の批評については既に色んなところで色んな方が熱弁を振るっているのだが、この作品についてひとつ気をつけて欲しいところがあるとすれば、それは『ミステリーとホラーの線引きの難しさ』についてだ。 この場合のミステリーとは推理を念頭に置く娯楽小説のことだが、ミステリーという言葉は便利なもので、原因が不明な怪しいもの全般に流用できる。それはSF小説だったり幻想小説だったり幅広いものを包括するが、ホラー小説も推理小説も探偵小説も全てその中に含まれてしまう。ミステリの始祖ポーが幻想小説・怪奇小説作家だったことを引き合いに出すまでもなく、推理小説とホラー小説・幻想小説は切っても切れぬ間柄なのだ。 この作品はその線引きがどこまでも曖昧だ。作者の綾辻氏がそう狙って書かれたのだろうから当たり前のことだが、その曖昧さが色んなところで色んな話のタネになる。概ねホラー小説のようなのだが、主軸は推理であるところも格好の議論の的だ。 それでも、この作品に渦巻く得体の知れない恐怖は、とても、怖い。綾辻行人の真骨頂を垣間見るような作品だ。
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