ネタバレ無しで読んで欲しい
島田荘司の『御手洗シリーズ』の知名度を一気に押し上げた作品。 できれば、何も知らない状態で読んで欲しいが、この作品に関してはいろんなところでとある作品のトリックと比較して語られてしまっているので、もしそちらを目にされていたなら仕方ない。 ただ、その状態で読んだとしても、この作品の魅力は損なわれることはない。 作者に次いで神の視点を与えられた『探偵』という役回りは、話を語ることができない。なぜなら、その思考の過程をただ書いていくだけでは、推理小説として成立せず、小説としても魅力に欠けてしまうからだ。それゆえ、古今東西の『探偵』のそばには必ず『助手』のような役回りで、最も探偵に近く、最も読者に近い役回りが必要となる。シャーロック・ホームズのワトスン博士しかり、この作品の石岡くんしかり。推理小説は、読者が助手役の彼(あるいは彼女)と共に右往左往し、真相がおぼろげながら頭に組みあがっている探偵の言動に振り回されるのも、醍醐味の一つなのではないだろうか。この作品はそんなことを思わせてくれる。 舞台設定もストーリーも、戦後の時代ならもしかしたらあったかも知れない、というもので、現実と虚構の線引きが曖昧でこの作品の空気を形作るのにとても相応しいと思う。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)