フランソワーズ・サガンの名作小説「ブラームスはお好き」の映画化作品「さよならをもう一度」 - さよならをもう一度の感想

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さよならをもう一度

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フランソワーズ・サガンの名作小説「ブラームスはお好き」の映画化作品「さよならをもう一度」

5.05.0
映像
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脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

このイングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン、アンソニー・パーキンスの豪華3大スター競演の映画「さよならをもう一度」は、言うまでもなくフランソワーズ・サガンの名作小説「ブラームスはお好き」の映画化作品で、私の大好きな俳優・トニ・パキことアンソニー・パーキンスが、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した作品でもあるのです。

この「さよならをもう一度」には、いろいろな意味のある言葉だと思う。 「さよなら」は人生の中で、幾度も繰り返しあるものだともとれるし、今は「さよなら」をするけれども、いつの日か逢える、逢いたいという哀しい願いを込めた言葉ともとれます。

この映画の原題名「GOOBYE AGAIN」は、「HELLO AGAIN」と同じ意味なのかもしれない。 初めてこの映画を観たのは、もう随分前になりますが、その頃は、私にはまだ出逢いも別れも中途半端でしたが、今では「さよなら」という言葉が「別れ」の意味だけではないことを知るようになりました。

「さよならなんて怖くない」なんて威勢のいいことは、私にはとても言えません。 やはり「さよなら」は哀しいもの。だけど、決してその恋を、その相手を私は忘れようとは思わない。 自分の心の中の部屋へその想いを大切にしまい込んでおき、その部屋へ時々訪れる。

その思い出が、初めは哀しいかもしれないけれども、きっといつか楽しい思い出になるに違いないのです。 新しい部屋が見つかるまでには、かなり時間がかかるけれど------。

ポール(イングリッド・バーグマン)は、もうすぐ四十歳、一度離婚しているが、今は好きな仕事を持ち、経済的にも安定した生活を送っています。 ロジェ(イヴ・モンタン)とは数年来の愛人関係。 ポールは、ロジェを愛しているが、プレイボーイの彼に心寂しい満たされないものを感じている。 彼もそれに気づいてはいるが、どうすることもできない自分を知っている。

そこへ、少年からすぐ大人になった様なフィリップ(アンソニー・パーキンス)が現われます。 彼は一目でポールに夢中になる。ポールは初めは迷惑に感じていたが、彼女の心の寂しさに入り込むようなフィリップからの「ブラームスはお好きですか?」という音楽会への優しい誘いに心が動揺するのです。

とにかく、バーグマンの一つ一つの仕草が、とても言葉では言い表せないほど、素敵なのです。 一人暮らしのアパルトマンへ帰る。 ロジェとは今ドアの外で別れたばかり、化粧台の前に座り、髪のほつれ毛をかきあげながら、イヤリングを一つ一つゆっくりとはずしていくシーン。

雨の中、ポールの店の前で彼女を待っているフィリップ、襟を立て、ずぶ濡れのまま立っている彼の姿を見て、思わず抱きしめてしまうシーン。 フィリップと同棲生活に入り、仕事に行かない彼をたしなめると「もう僕が嫌いになったの」とダダをこねる彼を抱き、ボロボロ涙を流すポール。

そんなポールの心の変化を知ったロジェとの言い争いの後、一人車を運転し、涙が出てくるのをぬぐいもせず、車のワイパーを動かし、目にたまった涙と雨とを勘違いする自分に気づき、思わず苦笑するシーン。 母性的な愛情で、フィリップに魅かれるポール。 そのどの行為も四十近い中年女性の心の寂しさ、いじらしさが痛いほど伝わってきます。

大人の、全てをわかりつくした女の魅力は、フランス映画の「夕なぎ」や「離愁」のロミー・シュナイダーにも見られましたが、この映画のバーグマンの美しさは、それに匹敵するものがあり、彼女たちを見ていると、女性にとって歳をとることは魅力を増していくもので、決して恐くはないのだという風に感じさせます。

ロジェは、ポールが離れていき、初めて彼女を愛していることに気づきます。 ポールもフィリップについていけない自分を感じ、ロジェの元へ帰る決心をするのです。 そして、ロジェとポールは結婚し、ポールの「I am old」という言葉に、泣きながら去っていくフィリップ--------。

今日もロジェの帰りを待っているポール。 化粧台の前に座り、コールドクリームを指にとり、顔にゆっくりと塗っていく。 その一つ一つの指の往復が、今まで幾度となく繰り返され、これからも繰り返すであろう、男と女の離れがたい関係のように思えてなりませんでした。

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