ポーランドの映画作家アンジェイ・ワイダ監督のレジスタンス三部作の1本「灰とダイヤモンド」
ポーランドの映画作家アンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」は、イェジー・アンジェイェフスキの同名小説の映画化で、「世代」「地下水道」とともに、ワイダ監督のレジスタンス三部作の1本だ。
東欧のジェームズ・ディーンと言われ、鉄道事故で早逝した若き天才俳優ズビグニエフ・チブルスキーが、戦争中は対独レジスタンス運動に青春を燃焼させ、戦後はテロリストとなって悲惨な末路を遂げる青年を鮮烈に演じ、スタイリッシュな映像とともに、この作品を青春映画の傑作にし、世界の映画史に燦然と輝く名作になったと思う。
1939年9月、ヒトラーのドイツが侵攻し、第二次世界大戦が始まった時、アンジェイ・ワイダ監督は13歳だった。 直後にスターリンのソビエトが東から侵攻し、ポーランドは分割され占領された。 そして、戦後、映画監督になったワイダ監督は、自伝の中で語っています。 「死者はものを言うことができないので、死者に声を貸し与えてやるのが私たちの義務である」と。
この映画「灰とダイヤモンド」は、「世代」「地下水道」「カティンの森」などと同じく、ワイダ監督が死者に声を与えた作品のひとつだ。 1945年5月、ワルシャワ反乱の生き残りで、反ソビエト派のテロリストの24歳の青年マチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)は、ソビエトから来た共産党地区委員長、シュツーカ暗殺の指令を受ける。 ワルシャワ蜂起でナチスと戦い、奇跡的に生き延びた彼は、ソビエトの指導下に新政府を樹立しようとしている勢力と、ポーランド人同士で殺し合いをしているのであった。
こうした中、マチェクは人違いで二人の男を殺してしまう。 シュツーカの息子は反ソビエト反乱者として逮捕され、銃殺の判決を受けていた。 マチェクは夜、息子に会いに行こうとするシュツーカの暗殺に成功し、その晩、ホテルでクリスティナという女と一夜をともにする。 翌朝、マチェクは町を発とうとするが、衛兵に発見されて撃たれ、ゴミ捨て場で悶えながら死んでいく--------。
全篇を通して、ぼんやりとしたディープ・フォーカスを使うことで、アンジェイ・ワイダ監督は、敵対し合う政治信条と同じように、さまざまな登場人物すべてが画面の中で同じ重さを持つように見せている。 しかし、なんと言っても素晴らしいのは、主演のズビグニエフ・チブルスキーが演じるマチェクだ。 サングラスに隠れている目と、少し不器用だが親しみのあるしぐさによって、東欧のジェームズ・ディーンと言われ人気を博し、政治的色分けなど無視して、ひとりひとりの本質を大切にしたいと思う若い世代のシンボルになったのだと思いますね。
ほんの短い場面の中で、彼は呆けたような表情から絶望や怒りへと表情を変えてみせる。 最後に撃たれた彼が、ぞっとする笑いを浮かべて、広いゴミ捨て場をよろめいて、歩いて行く時の「死のダンス」は、確かに映画史上最も強烈な、今でもしばしば引き合いに出されるエンディングだ。
この映画の題名の「灰とダイヤモンド」というのは、19世紀の詩の一節「永遠の勝利の暁に灰の底深く、燦然たるダイヤモンドの残らんことを」に由来している。 もし、この世が正しいものでないならば、負けていった者たちこそ、ダイヤモンドのように光り輝いているのではないか。 死者たちがそう声を上げているようにも思えましたね。
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