江戸川乱歩賞を受賞した陳舜臣のデビュー作「枯草の根」 - 枯草の根の感想

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枯草の根

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江戸川乱歩賞を受賞した陳舜臣のデビュー作「枯草の根」

3.53.5
文章力
3.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.5

陶展文は神戸で中華料理店を営んでいるが、もぐりの漢方医でもあった。その患者で、将棋仲間でもある、金貸しの老人が、アパートで殺害された。

殺害時、そのアパートには、何人もの人物が出入りしており、捜査は難航する。この殺害された老人は、地元政治家の贈賄収集人も務めており、その関係で殺されたのではないかと、陶展文の拳法の弟子である新聞記者が疑っていたが、そうこうするうちに、第二の殺人が起こるのだった。

この「枯草の根」は、江戸川乱歩賞を受賞した、陳舜臣のデビュー作であると同時に、著者のシリーズ・キャラクターとして最も有名な、陶展文のデビュー作でもあるのだ。

この時、ちょうど50歳。今では妻の甥が、厨房を仕切り、実際に包丁を振るうこともなく、時々、在留華僑のために、漢方薬を処方するくらいだ。

患者でもあった知人の殺害に遭い、かつて諜報機関に勤めた時の血が騒ぎ、謎の解明に乗り出すことになるのだった--------。

この事件自体は、派手なものではないし、ミステリの女王、アガサ・クリスティを思わせるメイン・トリックも、ミステリを読み慣れた者なら、すぐに気付くだろう。

ただ、滋味溢れ、時としてユーモアの漂う人間描写に基づく、伏線の妙が冴え渡っており、そのことが、陶展文の推理に説得力を与えていると思う。

細かい伏線を積み重ねて、トリックを見破る手がかりを、作中の探偵のみならず、我々読者にまで与える技巧は、すでにデビュー作にして完成していたのだと思う。

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