ラースの魅力とそれを支える女性たち - ラースと、その彼女の感想

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ラースの魅力とそれを支える女性たち

4.84.8
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.8
音楽
4.4
演出
4.8

目次

ラースのデスク

ラースは無口で、人との接触に過敏であったり、兄嫁から逃げるようなそぶりをしたりと一見、自分の世界に引きこもっているタイプなのかと思いますが、職場のデスクに兄夫婦の写真を飾っていて、職場の女性にバースデーパーティーに誘われ後ろ向きな回答をしつつも、自席につくとしげしげとそれを眺め、兄夫婦の写真と並べるように貼っている姿は、周りの人を大切に思っていることがわかります。

また、ヒーローもののフィギュアが飾ってある隣の席の同僚のデスクと比較すると、ラースの方が大人な感じがします。

そんなラースですが、意外なことにビアンカを連れて歩くようになってからも、ビアンカの写真を飾ったりはしていないので、やはりどこかで人間ではないという線引きをしていたのでは?と考えてしまいます。

気遣う

兄嫁のことを避けようとしつつも、身重の兄嫁が冷えないように気遣って大切なブランケットを貸したり、ダグマー医師に話してみたりと、自分にできることをやろうという気持ちがあります。

また、教会に花をおばあさんが運ぶのをごく自然に手伝ったり、ラブドールのビアンカを連れて、職場の女性のホームパーティーに参加した際も、自ら周りの女性の飲み物を持ってこようと声をかけたりしていたので、普段からジェントルマンな振る舞いをしていることが伺えます。

見た目

ラースは、中肉で口ひげを生やし、おしゃれどころかセーターに穴が開いていたりと、精悍とは真逆の見た目ですが、不潔な感じはしません。むしろ、中肉な感じに可愛らしさすらあります。例えば、ムートンブーツを履いてペタペタ走っていく姿など中肉の良さが出ています。

笑顔な感じ

話すのが苦手なラースですが、相手の話を聞くときには口角をあげて聞いています。コミュニケーションが苦手になのでそれを補うためにそうしているように見えるので、笑顔ではないのですが、話を聞いていますよという感じは、無表情でいるよりもずっとあります。

ユーモラス

教会の後、マーゴに話しかけられて慌ててカーネーションを投げ捨てるときの投げ方や、マーゴのクマに人工呼吸する「間」など、ラースに思いを寄せるマーゴもそれとなくラースに伝えているように、シャイだけではない面白みのあるキャラクターです。

その結果として

これらの特徴から、ラースはキーパーソンとなる女性たちに好かれています。まず一人目は、兄嫁です。ラブドールのビアンカを受け入れてもらえるよう教会に掛け合い、身重の体でビアンカのお手入れをし、ラースがふてくされたら真っ向対峙しと、この一番身近な兄嫁の全面バックアップがなければ、ラースは街から浮いてしまい、会社も辞めて本当に引きこもらなくてはならなくなってしまったかもしれません。

次に、ダグマー医師です。この医師は見事に兄嫁夫婦とラースを導いてくれました。専門家の立場から、ラースの心の解放を手伝ってくれています。もし少しでも偏見があったら、ラースはおかしくなったとして薬を飲ませたり、結論ありきでラースの話を聞いたりして、ラースの心をより閉ざしていたかもしれませんし、最後のビアンカの救急搬送もあんなにスムーズにはいかなかったでしょう。

その次に教会の老婆たちです。中でもリーダー的存在のグルナーが積極的に協力してくれたことは、とても大きかったです。教会にもビアンカと一緒にいけるようになっただけではなく、このコミュニティーの要に受け入れられたことで、ビアンカは街に認知されました。また、ラースがビアンカに嫌な怒り方をしたときは、「誇り高い女性は男のいいなりにならないものよ」と名言まで残しています。

職場においては、受付の女性がラースをずっと気にかけていて、自分のバースデーパーティーで戸惑いながらも、ビアンカを一人の女性として接したことで、ビアンカの髪型についてああでもないこうでもないというほど馴染むことができました。

最後はやはり、マーゴです。マーゴの存在がラースを成長させました。他の女性たちに対しては、感情的にも受け身なことが多かったのに対し、マーゴに彼ができたあたりから、マーゴに対しては、嫉妬をはじめとする能動的な部分が増えてきます。この能動的こそラースにとって重要なことであり、閉ざしていた扉を開く最後のひと押しであったと考えます。そして、ビアンカの死という完全な別れを決意し、実行します。マーゴいなければ、このきっかけももっと遅かったかもしれないですし、マーゴに彼ができなければ、ビアンカの死はずっと先のことだったかもしれません。

ラースの行動力

ラブドールは見ての通り大きさは人間なので、それを買うこと自体、覚悟があると思いますが、本来は家に置いておくものを、外に連れ出すとは骨の折れることです。いくら、心の病とはいえどそれは、エネルギーに満ちています。このエネルギーが図らずも身近な人だけでなく、街中の人々の優しい部分をさらに引き出したのだと思うと、他人は自分を映す鏡という言葉を思い出さずにはいられません。

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