永遠の命が欲しいか、欲しくないか - アデライン、100年目の恋の感想

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永遠の命が欲しいか、欲しくないか

4.54.5
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.5

目次

人間の夢、永遠の命とは

誰もが一度は考えたことがあるテーマなんじゃないかと思う。
ずっと生きていられたら…でも歳をとって歩けなくなって容姿も見苦しくなって
1人じゃ何もできなくなって、人の迷惑になってまで生きていたかといえばそうじゃないだろう。
それに長く生きるために人の血が必要とか薬がいるとかそんなイメージがある。
人と違うことをしようとすると何かを奪ったり、失ったりするのがよくある話だ。
しかしこの映画では年齢がずっと変わらない。ある程度大人で自由に出来る年齢でだ。
しかも綺麗でスタイルもいいとくれば人生楽しいことばかりなんじゃないかと思ってしまう。

29歳のまま歳をとらなくなった理由について

ナレーションが入って事故の詳しい説明をしてくれる。
うん、なんとなく理解できそうだ。よく分からないけどそうなのねって納得する。
最初はそのナレーションが安っぽく感じたけど内容的に無理矢理感がないのでよしとした。
さて、見た目がそんなに変わらない人はたいてい影の努力をしている。
特に30歳になるころから一気に身体の変化を感じるようになるから、否が応でも何かしらする。
まずは使っているものをちょっと高価にする。シャンプーや化粧水、ボディクリームなんかを
みんなと同じじゃなく自分専用にするし、食事や睡眠にも気を付けるようになる。
体内の衰えと言うのは少しづつ表面に出てくるものでそれを一番にわかるのは自分なのだ。
アデラインもそうだった。なんとか誤魔化しそれが通用しなくなると住居や職場を変える。
ちょっと違うが迫害をうけ始めたころの逃げ隠れるユダヤ人のことを思い出した。
見た目は綺麗で羨ましがられる存在でも心の中では苦しんでいる。そういうことって周りからは
とてもじゃないけどわからないし、わかろうとする人もいなかっただろう。
やはり人と違うというのはとてもつらかったに違いない。

歳を取らないと案外大変

その辺の友達になら、いい化粧品を使ってるとか遺伝ってごまかせるけどそうはいかないこともある。
ちょっとしたトラブルから疑われてしまうこともあるのだ。特に警察沙汰ともなると身分や名前を
変えて新しい街へ移動しなけらばならない。昔ならそういう手続きもなんとかなるかもしれないが
近代化が進む時代になれば彼女にとって生きにくい時代になりそうだ。
最初は思いつかなかったが、簡単に誰かを好きになることは出来なくなるだろう。
大切な人が多くなるほど悲しみも増えてしまうからだ。
長く生きてきたからこそ、彼女はこの秘密を娘以外誰にも打ち合えけないとを決める。
そして10年ごとに名前も居場所も変える。新しい場所で一から始めることは年齢を重ねていくと
変化はとても勇気がいることなのだ。見た目は29歳のままでも中身はきっとずっと大人だろう。

娘の方がおばあちゃん

当然だがそんな時も確実にやってくる。娘の介護を親がするのだ。
自分より娘が早く亡くなってしまうなんてそれ以上悲しいことはないだろう。
娘だけじゃない、自分の大切な人は全て自分より先にいってしまうのだ。
だから大切な人は増やせない。誰も愛せなくなってしまうし、そういうことを
避けて生きていかなけらば相手も自分が辛くなるのだ。
いくつもの出会いや別れを経験するとそのやり方が上手になると思う。
男性から声を掛けられた時の断り方、いいムードをうまく壊す方法。
引っ越すための言い訳や嘘。そんな自分がきっと嫌になるだろう。
それでも娘は母に恋をしてもいい、ママも私と同じとアドバイスする。
普通の時間を過ごせなかった親子がこれほどまでに理解しあえているのはすごい。
娘の存在は彼女にとってとても大きいものだと思う。
恋愛相談をしているシーンは見た目と中身の立場が逆でちょっと不思議な感じになる。
それでもすごく温かい空気が流れていていい。

今まで信じられる人はいなかったのか

歴代の恋人達に自分のことを打ち明けることはできなかったのだろうか。
きっと言おうとしたことはあっただろう、それでも言わなかったのはきっと理由がある。
本当のことを話したらどうなるか考えてみる。
まずはなかなか信じてもらえないだろう。この女、何言ってんだ?と思われるかもしれない。
テレビに売られて好奇の目にさらされてしまうかもしれない。
そして一生そういうことから逃げ回らなくてはいけなくなる。
自分だけじゃない、大切な人を巻き込んでしまうだろう。
そして最初は傍にいてくれたとしてもきっと、もう疲れたと言われ自分の前から去っていく。
そんな思いしたくない。

悲しい奇跡

やっと人を愛し、それを受け入れることにしたアデラインにすぐさま悲しい奇跡が起こる。
せっかく一歩踏み出したのに、愛した男性の父親がかつて愛した人だったなんて、こんなことある?
しかも自分にプロポーズをしようとしていたあの彼だったなんてなんとも皮肉で悲しい。
愛した人の血をひいているからこそ遺伝子レベルで惹かれたのかもしれない。
彼女の手の傷に気付いて正体がばれても黙っていてる彼の父。
いくら同じ傷があったとしても同じ人物だという発想にはきっとならないと思う。
それでも同じだと思えるのは彼女を心から愛していたからこそなんだと思った。
彼女にとっても唯一、自分で作った決まりを破ろうとした相手だった。
それほどまでに想いが通じ合っていた人だから、愛した人と、昔愛した彼の父親の前で
彼女はどんな気持ちだったのだろう。一日で考えるなんて出来ないんじゃないだろうか。
彼女との出会いは奥さんをも悲しくさせる。もし自分が妻だったとしても嫌な気分になるだろう。
そう、こうやってアデラインは人を巻き込んで苦しめ、自分の存在に絶望してしまうのだ。

心と頭の切り替え

アデラインの正体に気づいたエリスの父親の本当の気持ちはどうだったのだろうか。
かつて心から愛した人が息子の彼女として目の前に現れた。
昔の気持ちや思い出は色あせていても一気に色を取り戻す。大切に宝箱に入れていた想いが
一気に溢れ出しただろう。でも自分にはもう別の生活がある。戻れない、でも今も愛している。
そんな想いを一瞬でどう処理したんだろうか。息子の為にもう逃げないでと言ったのは本心か。
どんな形でさえ自分の傍にいて欲しかったのではないか?最初はそんな風に思った。
だってきっと、あの時話してくれていたら自分は全体に彼女を裏切らなかったと言う想いが
頭を駆け巡っただろうし、もし打ち明けてくれていたら今彼女と一緒にいたのは自分だったかも
しれないと思わずにはいられないだろう。かつて愛した人があの日のままここにいるんだから。

決断

もう逃げないと決断した時、神様は彼女に贈り物をくれる。
彼女の頭に一本の白い髪の毛を見つけるが、白髪を見つけて喜ぶのはきっと彼女くらいだろう。
全てを打ち明け、受け入れるエリス。それを知る娘のシーンんは何よりも幸せな空間だっただろう。
幸せな老いのかけらを見つけた彼女がこれからどんな人生を歩むのか、老いは加速して彼女を
襲うのか、それとも普通にゆっくり進んでいくのかは語られないが、どうであろうと彼女は前より
幸せになったと感じられる。そんな最後だった。

歳を取らずに永遠に生きていたいか

私の答えはNOだ。事故や病気で早く死んでしまう人もいる。自分もいつどうなるかわからない。
それでもやはり私にはこんなに長い間秘密を背負うのは無理だ。
苦しんで悲しんで死ぬ期間とアデラインのつらい時間を比べたら
きっとアデラインの苦しみは言葉では言い表せないし想像もつかないだろう。
長く生きること自体に意味があるわけじゃなく、自分がどう生きるかが重要である。
一日一日は同じようで違う。そんなことを考えさせられる映画だった。

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