病気がもたらしてくれたのは、最高の友情と最高の人生だった - 最高の人生の見つけ方の感想

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病気がもたらしてくれたのは、最高の友情と最高の人生だった

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

自分もこう思うかもしれない・・・余命宣告に対する考え方

この作品は数回見ているが、何度見ても自分の命との向かい合い方に共感が持てる。

アメリカ映画はシリアスなシーンでもブラックジョークを言うような精神的余裕を感じる登場人物がよく出てくるので、実際にもそういう人が多かったりする国民性なのかもしれないが、表面上は冗談を言っても、自分の病状が良くないと知って落ち込む気持ち自体は、あまり国民性は関係ないのかもしれない。

二人のがん患者の初老の男性が、病院の二人部屋で知り合い、最初は病気のせいでナーバスになっているせいかウマが合わないが、同病相憐れんだのか、徐々に共通する運命を背負った者同士のシンパシーが生まれていく。

相手へのいら立ちがシンパシーに変化していく過程も見事だし、二人が余命を宣告されるシーンについては、特にモーガン・フリーマン演じるカーターが、「1000人に統計を取ったところ、自分が死ぬ時を知りたいかという問いへのイエスは96%。自分は残りの4%の方だと思っていたが、実際は違った」というモノローグが、非常にリアリティがある。

おかしな話だが、人間いつかは死ぬにしても、もし生まれた時から死ぬ時期を知らされていたら、病気の有無に限らず人は生きる意味を見出せなくなったり、死の間際に重大な犯罪をしようとする人も出てきたりして、世の中成り立たなくなってしまうのではないだろうか。最近は終活なる言葉も流行りだし、それなりに死を前向きにとらえて準備する人も出てきているが、本音の所では自分の命のタイムリミットを聞いたら、最初は誰でもショックなのではないだろうか。

その大きな難題に一緒に立ち向かってくれる友と出会えたことが、この映画の二人の主人公と一人の秘書にとって、神様からの最高の贈り物だったと言えよう。苦難の原因も病気だったが、幸福のきっかけも病気だったとは、世の中何が転じて幸不幸になるかわからないものだ。

また、作中に出てくる、死んでいるはずだけど土葬は閉所恐怖症、火葬で途中で目が覚めたら?などの不安は、口には出さないけど考えたことがある人はいるのではないだろうか。日本の葬儀で棺桶に釘を打つ作業を見て、閉じ込められ感がなんとも嫌なので自分の時は釘を打たないでほしいと思ったことがあったため、非常にこのシーンは共感を覚えた。

希望がかなったのはお金があったからではなく、行動力があったから

この映画を初めて見た際は、こんな風に生涯を終われるのは幸せなことであるし、何よりエドワードという大金持ちに出会えたこと、願望をかなえる財力があってこそ、この映画はハッピーエンドだったのだと、面白かったけどノンフィクションだからという感想しか持たなかった。

しかし何度か見るうちに、確かにこの作品の様な、世界旅行を伴う大きな体験をするには財力は必要ではあるが、ただ金があっても物語は成立しなかったのではと思うようになった。

エドワードが、カーターの「死ぬまでにやりたいことリスト」に興味を持ったこと、二人がやりたいことに夢膨らませ、それを実行しようと行動に移したこと。この意欲の方が原動力としては大きかったのではないだろうか。

例えば、やりたいことのリストを自分たちの経済力に見合った内容にすることもできたと思うが、それでは映画としては面白くない。若干のエンターテインメント性があるからこそ、この映画は面白い。また、少々大袈裟な冒険でも、余命宣告後でも体が動くうちなら色々出来ることもあると、この作品を見た患者に夢を与えるきっかけにもなったろう。

衝突も含めて真逆の性格だから理解し合えた

モーガン・フリーマン演じるカーターは、生真面目で博学、仕事は自動車の修理工で職人に近い人物、ジャック・ニコルソン演じるエドワードは、女性が大好きで皮肉屋、会社の経営者という、病院で同部屋にならなかったらおおよそ接点がなかったような二人である。

気が合うということは、同じような性格だからということばかりではなく、異質だからこそ互いの違った考えで補い合うことができる場合もあるということを、この作品は証明している。

旅の最後に悲しい衝突をしてしまったのは残念であったが、その後カーターが倒れた際にすぐ和解しあえたのも、二人は異質であったが共通点として、異質は異質で排除するのではなく理解する度量があったからと言えるだろう。ケンカ別れをし、助からないかもしれぬ手術に向かうカーターが、エドワードとの会話でリストにあった「泣くほど笑う」を二人で叶えるのも、その象徴的出来事と言える。

また、ジャック・ニコルソンが来日した際、この作品についてのインタビューで、エドワードがカーターのそばかすについて「いつからあるのか」と尋ねるシーンについては、ジャックが前から思っていたことをモーガンにそのまま尋ねたアドリブで、モーガンが見事なアドリブで返したことを語っている。役者本人の素の部分が、役と一体化していい味を出していたのもまた裏話を知ると味わい深い。

二人が同じ性格・境遇の人物だったら、物理的に大きな願いを叶えることも、心理的に大きな願いを叶えることをも、また互いが互いの家族への愛情を再び顧みることもなかったかもしれない。

違った自分を引き出してくれるのは、自分と違った価値観を持つ人との出会いと、色んな人がいるから世の中面白いという、異質なものに批判的な今の世に新たな気付きを与えてくれる作品である。

秘書がいい味を出している

この作品では、主演の二人の他に、エドワードの秘書が非常に要所要所で良い役割をしている。旅の補佐もそうであるが、結果的には本当に人生を最高にしてくれた、カーターがリストの最初に挙げた「荘厳な景色を見る」「見ず知らずの人の役に立つ」という、願いの中でもかなり願望のウェイトが大きなものが叶ったのは、この秘書のおかげと言っても良い。

セリフ回しも非常に巧妙で、カーターの危篤をエドワードに知らせる電話を、会議中で一度は出るのを断るエドワードに、「出てください」とせっつくのではなく、「お出になった方がよろしいと思います」と、押し付けがましくないが非常にエドワードが気にせざるを得ない、出ざるを得ないような言い方をするあたり、若いのに人生経験や人を動かす力に長けた人物と言っても良い。

エドワードは何度も結婚に失敗しているし、どうやら横暴な一面もあったようだが、カーターとの出会いと言い実は人を見る目自体はあるのではないかと思う。

違法行為とは言え、二回も危険な登山を単独で行い、二人の夢をかなえてくれた秘書。血縁がなくても、ここまで誠意を尽くしてくれる人の存在というのも、この作品の特筆すべき部分だろう。

どこか、最近日本で話題を呼んでいる、矢部太郎さんの漫画作品「大家さんと僕」のような、血縁を超えた絆に胸を打たれる話と共通した感動を覚える。秘書があからさまに遺産を狙っているような笑える描写もあるが、単に遺産狙いでここまでの誠意は尽くせないだろう。最もここまで忠実な秘書なら息子も同然。エドワードも恐らく(?)彼に遺産を残したに違いない。

必ず訪れる「死」を「かわいそう」にせず「最高」にする考え方

この作品の死の捉え方は、邦画にはあまりない考え方と言わざるを得ない。強いて死に前向きな作品と言うと、木更津キャッツアイがどうかという感じだが、大抵の闘病関係の作品は、言葉悪く言うとお涙頂戴ものになってしまいがちだ。

この作品の二人だって、年齢的には若干死ぬには早い年代の男性で、話の作りようによってはもっと悲壮感あふれる内容にもできたと思う。先に述べた、死に向かう手術の間際にカーターのうんちくで大爆笑したりもそうだが、この作品はシリアスな側面も持ちつつ、全体としては明るい雰囲気を保っており、いかなる生でも精一杯生きる人を憐れむのではなくリスペクトする前向きさを感じる。

最近は医療ものの作品なども、ノンフィクションでも見る人によっては人の死を金儲けにしていると酷評することも多いが、「最高の人生の見つけ方」については日本でもかなり高評価である。誰にも訪れる死だからこそ、哀れみより最高だったという受け止め方をしたい。そんな理想が体現された作品だといえよう。

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後悔しない生き方を

死を考える生きるということは死に向かって歩むことだと私は思っています。道の長さや景色などはそれぞれ違うでしょうが、前に向かうのは一緒のこと。この映画は正直言って非現実的です!でも大事なのはそこじゃないと私は思っています。自分の余命なんて誰にでも正確にはわかりません!もしかしたらこの数分後に何らかの事情で心臓が止まったりする可能性は誰にだってあります。だからこそ出会いを大切にし、どう自分と向き合っていくのかが大事なことっていうのがこの映画のテーマになっているかと思います。わかりやすく病気で余命という描写にしているだけで、誰にでもあてはまる題名だと考えました。今日一日を誰とどういう時間をすごすのかっていうのがとても大切だということを再認識させてくれた映画だと思います。トマスの存在エドワードには自分を支えてくれる家族や妻の姿がありますが、カーターにはいません。彼にとって支えてくれる人って誰な...この感想を読む

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