張り巡らされた伏線 - ゴーストハントの感想

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ゴーストハント

4.504.50
画力
4.50
ストーリー
4.67
キャラクター
5.00
設定
4.67
演出
4.50
感想数
3
読んだ人
3

張り巡らされた伏線

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

選ばれし霊能者メンバーたち

ナルとユージン――この物語最大のネタバレである。ナルは、普段は「渋谷一也」という通名を名乗っているため、周囲はナルのことを日本人だと思い込んでいる。そして読者も、ナルのことを生粋の日本人だと思い込んだまま、物語はラストまでずっと続いていく。ナルは見た目がアジア系であり、日本人の名前を名乗り、流暢な日本語を話す。そのため、誰もが彼を日本人だと信じて疑わなかった。しかし、彼の正体がバレなかった要因は見た目や名前だけではない。SPRメンバーたちの絶妙なキャラクター設定が、ナルの正体を余計に分かりづらくしてしまっていたのだ。読者は、作者の巧妙な罠に、最初からまんまとハマっていたのである。まず、ジョン・ブラウンの存在は大きい。金髪碧眼のオーストラリア人で、誰がどう見ても外国人であり、彼が話す日本語は“なんちゃって京都弁”というインパクト絶大な喋り方だ。「カタコト日本語の白人さん」という、典型的な外人キャラクターをメンバーに入れたことにより、アジア系の外国人であるナルの存在は見事に覆い隠されてしまう。また、リンは日本語を話せる香港人だが、その国籍が分かるのは中盤で、それまでは日本人だと思われていた。リンの正体が分かった時点で、SPRメンバーには既に外国人が二人存在している。さらにそこにもう一人、オリヴァー・デイヴィスというイギリス人が隠れているだなんて、誰が想像しただろうか? 様々な霊能力を持ったメンバーが必要ということで、他国のメンバーを入れた方が都合が良かったというのもあるのだろうが、ナルの正体隠しにも一役買っていたのだ。しかもジョンは英語が母国語のため、「ナル」という英語の名前についても知識があった。ナルの正体を隠すにも、明かすにも、ジョンは必要なキャラクターだった。他のメンバーも、ジョンを目立たせるために必要な日本人だった。彼らは、考え抜かれて選ばれたメンバーだったのだ。 

伏線は蜘蛛の糸のように

「オリヴァー博士」の名前は作中で何度も堂々と出てくるのだが、オリヴァー博士=ナルだとは終盤まで分からない。しかし、伏線は十分なほどに張ってあった。もし、この漫画の連載開始時に(または原作小説発表時に)インターネットが普及していれば、読者はオリヴァー・デイヴィスが架空の人物だとすぐに気が付いて、ナルの正体を簡単に予想することができたかもしれない。インターネットが普及していなかった時代の作品だからこそ、できた芸当だろう。また、原作では、電話番号を教えられないという部分に着目してナルの住居を推理していたが、これも携帯電話が普及していない時代ならではの伏線である。こちらの漫画版が描かれた時には、すでに携帯電話が普及していたので、原作とは少し違う根拠に修正されていた。原作小説のリライト版も同様である。だが、たとえナルが携帯電話を持っていたとしても、麻衣に連絡先を簡単に教えるかどうかは、疑問の残るところだ。

クールになったナル

原作小説を読んだ方なら薄々感じていることだと思うが、漫画版のナルは、原作のナルよりも大分クール度が増している。一番分かりやすいのは、ヲリキリ様の事件のラストで、デコピンをするシーンである。原作小説では、ナルが麻衣にデコピンを食らわすというシーンがあるのだが、漫画版ではカットされている。漫画版の第1巻から読んでいれば分かる通り、漫画版のナルは、デコピンをするような性格ではないのだ。原作よりも物言いがきつく、かなり冷たい印象である。湯浅高校の事件の際、ナルが麻衣に手品を披露するシーンがあるが、漫画版のナルがあれをやると、大変違和感があった。ちなみに漫画版を描いているいなだ先生は、自身の同人誌で、例のデコピンシーンを描いていた。本人が原作のファンであり、デコピンシーンのことも当然知っているのに、何故このような性格変更がなされたのかは謎である。他のキャラクターは原作にほぼ忠実な言動をとるが、ナルは少し性格が違うので、今でもそれが少し気になっている。そして、原作小説のリライト版では、ナルの性格が漫画版寄りに少し修正されていたようである。原作者公認ともとれるので、特に問題はないのだろうか……。

一人でも恋はできる

このストーリーは、なんと「恋した相手が実は故人だった」という、少女向けにしてはやや暗い終わり方をする。麻衣が好きだったのは、ナルの方ではなく、既に死亡している兄のユージンだったことが、かなり最後の方で明かされるのだ。最初からずっと読んできた読者は、第一話から一緒に調査をしてきたナルとくっつくものとばかり思っていたことだろう。まぁ、ユージンも第一話から堂々と登場しているので、麻衣を途中から横取り(笑)したわけではない。あれだけドーンと全ての事件で登場しておきながら、その正体を推理できなかった読者の負けだ。そして、こんな辛い結果にもかかわらず、麻衣は悲観的にはならない。ナルは、麻衣のために(だと信じたいが)ユージンの写真を麻衣にあげる。ナルの優しさが少し出ていて、それでも麻衣の本命はユージンで……。何とも言えない余韻の残るラストである。

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少女漫画にあるまじきハイクオリティなミステリホラーこの作品は小説が原作で、そちらは「講談社X文庫ティーンズハート」から出版されている。漫画のほうは「なかよし」で掲載されていたもので、それだけ見れば完全に「少女漫画」だが、ゴーストハントはそんな甘々ふわふわ乙女チックな作品ではない。もっと大人向けのレーベルが相応しいのではと思うところだが、あえて「少女漫画」を貫くのがシニカルで面白いし、「少女漫画」として出版されたものだからこそ、子供の頃からの根強いファンがいるように思う。私は中学生のときにこの漫画を読んだが、10年経った今でも変わらず大好きで(むしろ年々愛が深まっているような気さえする)、大人になってから読んでいたらここまでのファンにはなっていなかったのではないかと思う。この作品の醍醐味はなんと言っても「本格的なミステリー」だ。ただ「法力や聖なる力で悪霊を祓ってめでたしめでたし」ではなく、「...この感想を読む

4.04.0
  • アリスイデアアリスイデア
  • 158view
  • 1139文字
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