ドライヤー、貸してください!
みなさん!お手を拝借!!
「海月姫」を視聴した感想です。
キラキラした世界観は良かったと思いますが、全体的に話を詰め込みすぎな印象を受けました。
やりたい事がたくさんあるのに、どれも中途半端に終わらせてしまっている印象です。
どうしても時間的に無理があるのは分かるのですが、全12話できれいに終わったテレビドラマ版を思い出すと、「題材はいいのに、勿体ないなあ」と思ってしまいます。
主人公の月海の内面を語らせるのも、蔵之介の生い立ちを語らせるのも、どちらも中途半端で、原作のマンガを読んでいない人が見ても、感情移入できるのか?と疑問に思いました。
もっと月海は内面を語るセリフが多くても良かったと思います。
なぜこんなに「お洒落人間」が苦手なのか?の説明が欲しかったです。
オタクでダサくても、コミュニケーションが苦手な人ばかりではないですからね。
そこは偏見じゃないかと思ってしまいました。
また、蔵之介が生家でどのような立場なのかも分かりにくかったと思います。
蔵之介はしっかり者で生真面目な修とは対称的に、出来の悪い弟として描かれています。
しかも、実子ではありますが、正妻の子供ではありません。
ドラマ版では、それも含めて公平に愛されて育てられた設定となっていますが、映画版だと父親に疎まれているのでしょうか。
それで父親に反発した蔵之介が、父の演説カーの前で女装姿で登場し、ファッションショーのビラを配布。
最終的には、開発反対の声が大きくなるきっかけを作り、父を政治的に追い込んだのでしょうか。
ちょっとその辺りが分かりにくかったですね。
修が蔵之介をどう思っているのかも分からないですし、蔵之介と父親がどのような関係なのかも分からなかったですね。
開発に賛同した鯉淵は、明らかに悪者として描かれていましたが…。
そうした姿を見せられても、溜飲が下がるような気持ちにはならなかったです。
最後に父親が政治的に追い込まれても、蔵之介は全く動じていなかったことに、違和感を感じました。
ジジ様が全然喋っていないのが気になる…
また、説明不足な印象は、他のキャラクターにも当てはまることで、尼~ずや稲荷、兄の修など、魅力的なキャラクターが多いのに、活躍が少なかったように思ってしまいました。
稲荷や修は、本当に勿体ない扱いだったと思います。
稲荷は天水地区の土地開発を目論む、大手ゼネコンの社員で、最初はハニートラップを仕掛けて修を意のままに操ろうとします。名前の通り、まさに女狐ですね。
しかし狂言自殺をした際に、修に叱られたのをきっかけに、修に好意を抱くようになっていきます。
その辺りが中途半端に描かれているので、ちょっと意味不明になっているように思いました。
まず、稲荷はハニートラップを仕掛けなくても、後に鯉淵家は天水地区の開発に賛同していますから、時間の無い中このシーンを入れなくても良かった気はします。
また、狂言自殺のシーンも、稲荷は修に好意を抱かなかったので、「何のためにこのシーンを入れたの?」と思ってしまいました。
正直稲荷はいなくても、ストーリーにはあまり影響は無いように思ってしまいました。
また、修に至っては、月海のどこに惹かれたのかがよく分からないし、水族館で月海を抱き締めるシーンもおざなりになっていました。
一番酷いのは、プロポーズの返事がどうなったのか描かれていないことです。
いつの間にか無いことになっていました。
時間がないのは分かりませんが、もう少しどうにかならなかったのか、と思ってしまいました。
お洒落は武器だ。身に纏え!!
また、この作品のテーマは、尼~ずのように、お洒落や社会に出ることに二の足を踏んでいる人に、渇を入れる事だと思うんですよね。
わたしは原作のマンガは読んでいなくて、映画よりもドラマ版だけ先に見てしまったのですが、天水館でのファッションショーまでの話は、そのように見えました。
作品前半では、蔵之介のセリフのように「そんなんじゃダメ!もっと強くなれ!」という原作者からの強いメッセージも感じますし、「でも、あなた達の気持ちも分かるよ」という月海や尼~ず目線のフォローもあると思うんです。
映画版では、そうしたメッセージ性が少し弱いような気がしました。
特に、「お洒落は自分を強くする鎧だ。鎧を身に纏え」という蔵之介のセリフがカットされていたのは残念でした。
恐らくこのセリフが、原作者からの尼~ずやそれに近い読者への、伝えたいメッセージだと思うからです。
ファッションを通して勇気を得ていくという、この作品の肝になってくるセリフですよね。それが無かったのは、ちょっと残念です。
全体的に、テレビドラマ版と比較するとどうしても見劣りしてしまうのが否めませんでした。
ただ、前山田健一さんが担当している作中の音楽は良かったと思います。
ファッションがテーマの作品らしいポップな楽曲や、繊細な海月の美しさを思わせるようなピアノの楽曲など、この作品の世界観に合った音楽だと思いました。
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