切ない青春恋愛ものというよりコメディ映画 - 高校デビューの感想

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高校デビュー

3.503.50
映像
3.50
脚本
3.00
キャスト
4.00
音楽
3.50
演出
3.50
感想数
1
観た人
1

切ない青春恋愛ものというよりコメディ映画

3.53.5
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
3.5

目次

切ない青春恋愛ものというよりコメディ映画

妙なポップさはプロデューサーの影響か?

高校デビューは、原作が集英社の「別冊マーガレット」に掲載されていたが、この映画を見て、2006年に実写化された、同じ別マの作品、「ラブ★コン」を思い出した人も多いのではないだろうか。

原作にはない、妙にポップな色調の教室や晴菜の自室、私服のセンス、作品全体に強調された「可愛らしさ」のような演出が、非常にラブ★コンと酷似している。

連載雑誌の購買層から同じ層の読者をターゲットにした映画なので、偶然そういう演出になったのかと思っていたが、同じプロデューサーである山田雅子氏が両作品に起用されていることから、この方のセンスが生きているのかもしれない。

高校デビューという言葉自体が今は死語になりつつあるが、基本的にはおチャラけた印象がある単語である。そのタイトルを映画化する場合、コメディ路線で行くか、河原和音氏の作品特有の、純朴さゆえの切なさどちらかにフォーカスを当てたらよいかというのは、非常に難しい。

この作品ではタイトルの印象通りのインパクトを序盤から醸し出しているが、映画を観た後原作を読んだ人は、主人公晴菜が思いのほか普通の女の子なので、拍子抜けしてしまうかもしれない。

明るさとエキセントリックの違い

原作の長嶋晴菜は、中学時代にソフトボール一筋に生きた、純朴で明るい女の子として登場する。青春時代がこのままでいいのかと、彼氏を作りたい、おしゃれになりたいと、小宮山ヨウに指導をお願いするというのが大筋であるが、いわゆる天真爛漫なことと、エキセントリックは違うのでは?とこの作品を観て感じる。

映画の冒頭から、晴菜は単なる変わり者、顔こそかわいいけど、髪はぼさぼさで奇行が目立つ、本当に「作られたキャラクター」という感じがし、人物像に現実味がない。原作の晴菜の様な、青春をスポーツだけで終わらせたくないから、高校では恋がしてみたいという、共感が持てる自然な人物像になっていないのだ。

確かにモテたいがために上級生の男子に指導を頼む行為自体が変わっているといえば変わっているのだが、映画は若干晴菜の言動や行動が「変わり者」過ぎてしまっているように感じる。比較的常識的に描かれているヨウが、彼女のどこを好きになったのか伝わりにくい。演出上の問題もあったのかもしれないが、明るく天真爛漫なことと、エキセントリックは違うのだが・・・という印象がぬぐい切れない。

溝端淳平さんの好演が光る

小宮山ヨウという役柄は、非常に難しい。原作でもつかみどころがなく、クールな用でお人好しなところもあり、実は元彼女との間に嫌な思い出を抱えていたという深いキャラクターである。外見も、河原和音氏が描く男性は、絵柄的に誰が見てもがっつりイケメンというタイプではなく、見る人が見ればジワジワイケメンというキャラが多いので、一見地味であることが多い。

しかし、溝端さんはヨウが持つ独特の「トラウマを持ったミステリアスな男性」を見事に演じているし、暗い色調の決して派手な服装をしているわけではないのに、存在感がある。

そういう意味では、ヨウ以外の作風全体の無駄なポップさや、晴菜のエキセントリックさが、ヨウという掴みどころのない地味さを持った男性を引き立てたとも言える。

晴菜の変わり者っぷりに観る側がドン引きしてしまったとしても、まともなヨウに晴菜が好感を持たれているという展開だけでもかなりストーリーとしては救いがあるように思う。

少女漫画でも、ヨウのようなチャラチャラしているわけでもなく、強烈な個性があるわけじゃないのに魅力があるキャラクターというのは非常に珍しい。(そういう意味では、河原和音氏の作品、先生!の伊藤先生も同じようなキャラクターと言える)溝端さんの演技力が、非常に評価されてよい作品である。

演技が難しい晴菜役

本来晴菜は映画ほどエキセントリックな少女ではないのだが、この映画ではお笑い芸人の様な演技が求められるため、大野いとさんも大変ご苦労されたのではないかと感じる。

自然な表情による喜怒哀楽ではなく、必要以上に誇張された表現をしなくてはならなかったせいか、大野さんが自然な感じに演じようとされたのか、誇張表現とのミスマッチが起こって棒読みのように感じてしまう部分がいくつか散見された。彼女の演技力に問題があるというより、この映画の晴菜役はそれこそ女性お笑い芸人のどなたかが演じた方がやり易かったのではないかと感じるようなキャラクターのため、よく頑張られたと思う。

外見などの可愛らしさは原作の雰囲気が良く出ていただけに、好きになってはいけない人を好きになってしまった切なさを、もう少しリリカルに表現できる役どころだったら、別の味が出たかもしれないだけに、惜しい。

娯楽映画としては面白いのだが、河原和音氏の作品に流れる、どこか胸が締め付けられるような切なさというのはあまり感じられない作風になっているので、辛い恋をむしろ笑い飛ばしたい女の子には、楽しめるのではないだろうか。

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